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碧空(あおぞら)【ダイヤのA】

第4章 ④


「試合だったの?」
「ああ、遠征。」

「そうなんだ。お疲れ様。そう言えば、守山くんから聞いたんだけど夏の本選が始まったら吹奏楽部も応援に行くんだってね。私、頑張って応援するね。それまでに野球のルールちゃんと勉強しておく。」

ふふふ…と笑う永原に心が乱れる。

自分を労う言葉と応援に行くことを楽しみにしているような素振り。純粋に嬉しい。
だけど、それ以上に引っ掛かる『守山』と男の名を口にする笑顔。

守山とはそんなにたくさん話しているのかよ…
いや、当然と言えば当然なのだ。同じ部活で同じ楽器。話すことも多いだろう。

「永原さん?」
「あ、ごめん。もう行くね。じゃあね。」
「ああ…」

守山に呼ばれ御幸に駆け寄ったように守山の元に向かう永原。

瞬間、また守山と目が合いふっ…と笑われた気がした。ギリッと奥歯を噛む御幸だが本人にその自覚はない。
苦虫を噛み潰したような顔のまま二人の後ろ姿は見ずに踵を返すと寮へと向かった。

帰って風呂に入りようやく汗や泥を流し、スウェットに着替えると試合のビデオを見直した。

だけど、集中できない。映像を見ていても夕焼けに照らされる二人の影とふっ…と笑った守山の顔がちらついて上手く頭が回らない。

「くそっ……」

一人ごちると今度はバットを持って外に出た。外では素振りしている部員がちらほら。御幸も同じように何度か素振りをするが、これもまた集中できない。

ダメだ…流石の御幸も頭をガシガシ掻くと沢村が素振りしてるのが見えた。

そういや、さっきの詫びしてないな…球でも受けてやるか…いや、休ませてやんないとな…

ふぅ…と一息吐くと部屋に戻り財布を手にコンビニへ向かった。
     
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