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碧空(あおぞら)【ダイヤのA】

第3章 ③


「ねぇ…御幸くん?」

普段なら声を掛けられても一度では気付かない。酷いと倉持の手が飛んでくるまで声が聞こえないこともよくある。

だけど、その声は御幸の耳に、いや、心にすっと入ってきた。

「え……」
顔を上げ横を見れば永原が自分を見ている。

「それ何の本?」
「ああ…スコアブック。野球の。」
「野球のスコアブック?御幸くん野球部なの?」

正直、少し驚いた。これでも自分はメディアに取り上げられることもある。甲子園にも出場して高校野球を知っていれば青道の御幸と言えばほとんどの者が「ああ、あの御幸か」と思う程には世間に知られている存在だと思っている。
高校卒業後の御幸はプロか?進学か?何て早くから言われたりもしていたし。

だけど、目の前の大きな黒い瞳はそんな自分のことを知らないらしい。
いや、野球を知らない女子高生なら或いはそれが普通なのか。

「え?碧、御幸くん知らないの?」
「何?有名人なの?」
「青道野球部の御幸一也。これでも結構、有名人で他校にファンがいたりするんだよ。」
「え……」

クラスメイトが面白おかしく自分のことを紹介してくれたが、永原は戸惑うばかり。

本当にこの子は自分のことを知らないらしい。
それはそれで少し新鮮な感じもするが。
    
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