第3章 ③
翌日。今日も綺麗に晴れた空の元、絶好の練習日和。
いつもの朝練を終えると昨日から自分のクラスになった3Bへ向かう。
教室には既に半数以上の生徒が登校していて友達と談笑している奴、静かに本を読んでる奴。そんな2年生の頃と何ら変わらない風景。その変わらない風景を変えるものがただ一つ。
昨日の転校生、永原。
「おはよう…」
静かな口調で挨拶しながら教室に入る御幸。
自分の席に目をやれば永原は既に席に着き何人かのクラスメイトと話しをしている。
「あ、おはよう!御幸くん。」
一人が気付き御幸に声をかけた。
「おはよう。御幸くん。」
「あぁ…おはよう。」
永原もまた御幸に気付くとおはようと笑顔を向けてくる。
その姿に挨拶しながらも思わず目を逸らした。
なぜそうしてしまったのかは分からない。何となく気恥ずかしかったのかも知れない。
別に御幸に女の免疫がない訳ではない。野球部のマネージャーは女子だし、クラスメイトの半分は女子。普通に会話もすれば手が触れてしまうことくらいある。
それで照れることもなければ、心踊ることもなかった。
御幸にとって女子生徒は他の男子生徒と何ら変わらない存在だったのだ。
自分のそんな態度に少しの違和感を覚えながらも席に着くとまたスコアブックを取り出し開いた。
沢村の球はまだまだ定まってないな…降谷は…序盤が力み過ぎ……そんなことを考えていれば周りの声は遠くなり自分の世界に入り込んでいた。