第10章 君だけの吸血鬼(新開隼人)
会場に足を踏み入れた瞬間、色とりどりのライトと音楽に包まれた。
壁にはハロウィンの飾りが揺れ、テーブルの上にはお菓子やドリンクがずらりと並んでいる。
そんな中、いち早くこちらに駆け寄ってきたのは、天使の羽と輪っかをつけた一年の真波くんだった。
「わぁ、まりんさんも杏子さんも、めっちゃ可愛いですね!」
ぱっと笑うその顔は、まるで本物の天使みたいに無邪気だ。
「ありがとう、真波くん!わかってるじゃない」
杏子が自信満々にウィンクを返す。小悪魔衣装のせいか、その一言すら妙にハマっている。
そこへ、賑やかな声とともに東堂と荒北がやってきた。
「気合い入ってるじゃナァイ!」
「嫁入り前の女子が肌を見せすぎではないか!?」
狼の耳と尻尾をつけた荒北がニヤリと笑い、警察官の格好をした東堂が、眉をひそめながらも視線を逸らせずにいる。
会場が笑いに包まれる中、私はふと視線を感じて顔を上げた。
――少し離れた場所で、ドラキュラのマントをまとった隼人が、こちらをじっと見ていた。
いつもなら真っ先に来て「似合ってる」って笑ってくれるのに、今日はなぜかその表情が険しい。
不機嫌そうなその顔に、胸の奥が小さくざわめいた。