第9章 私だけのサンタクロース(東堂尽八)
涙が止まり落ち着いた頃、私は寒かったので尽八を暖房の効いた自室へと通していた。
「ご、ごめんね。泣くつもりじゃなかったんだけど」
「なーに、気にすることはない。そんなに喜んでもらえたならオレも嬉しいよ」
今になって泣いてしまったことを恥ずかしく思い俯いていると尽八は私の顎をクイっと持ち上げ上を向かせる。
「なっ何!?」
「ん?下を向いていては茉璃の美しい顔が見られないだろう」
「だ、誰が美しい顔なのよ!そんな恥ずかしいことよく真顔で!」
私が顔を赤くしてそう言うと尽八はフッと少し笑いそのまま私へと口付けた。
「っ!?」
「どうかしたか?顔が真っ赤ではないか」
「っるさい!!!」
恥ずかしがる私を見て尽八はさらに笑う。
そして何かを思い出しかのように持って来ていた大きな白い袋に手を突っ込んだ。
「そんな可愛い茉璃にはオレからクリスマスプレゼントをやろう」
そう言いながら尽八が袋から出したものに私は言葉を失った。
「東堂尽八フォトカードに尽八くんストラップ、山神マグカップに眠れる森の美形クリアファイル、極め付けはこのいつでもオレを抱きしめられる東堂尽八抱き枕だ!全てこの日の為に作成した一点ものだ!!」
尽八の取り出したそれらには全て尽八の顔がプリントされている。
抱き枕に至っては全身プリントだ。
「これでオレをいつでも感じることができるだろう」
「えっと、いらないんだけど…」
「なにー!?」
尽八は私の言葉に予想外とでも言うような顔をしている。
私がこれをもらって本当に喜ぶと思っていたのだろうか。
まぁ確かにファンの子達なら喜んで取り合いになる品々だろう。
だが私は別にファンではない。
というか、これはどうやって作ったのだろうか。
自分で自分のグッズを制作している姿を想像すると笑みがこぼれる。
「やっと笑ったな」
「え?」
笑顔でこちらを見つめる尽八に思わずドキリとする。
「どうかしたか?」
「な、なんでもない」
恥ずかしくなって背を向けると尽八は私を後ろから強く抱きしめて来た。
「寂しい思いをさせて悪かった」
「ううん。こうして来てくれたから寂しくないよ」
そう言うと尽八はさらに抱きしめる腕に力を込めた。