第9章 私だけのサンタクロース(東堂尽八)
しばらく眠っていた頃、私は携帯の着信音で目を覚ました。
眠たい目をこすり携帯のディスプレイを確認するとそこには”非通知”の文字。
私はタチの悪い悪戯だろうと気に止めることもなく電話にも出ず終話ボタンを押した。
静かになった携帯を元の位置に戻し再び眠りにつこうとするとまた着信。
やはりディスプレイには”非通知”の文字。
不信に思いながらも悪戯だったら文句の一つでも言ってやろうと通話ボタンを押し携帯を耳に当てると電話の向こうからなんとも愉快な声が聞こえて来た。
<ワッハッハー!茉璃、メリークリスマス!オレはサンタクロースだ!>
その愉快な声は紛うことなき尽八だろう。
「尽八、こんな時間にどうしたの?」
<んなっ!?なぜわかっ…おっと、違った…オレは東堂尽八ではない!まぁ、この美声だからな!聞き違えてしまうのも仕方がない!ワッハッハー!>
時刻はまもなく深夜0時。
設定ガバガバのサンタクロースが出てくるおかしな夢でも見ているんだろうと自身の頰をつねってみる。
だが残念なことにヒリヒリとした痛みが走りこれが夢ではないことを証明した。
夢でないとするとこの男は本当に何を言っているのだろう。
<茉璃?>
「え、あぁ…で、サンタさんは一体こんな時間に何の用ですか?」
<茉璃、外を見てくれ。そこに茉璃へのクリスマスプレゼントがある>
なぜ尽八がそんなことをいうのか意味がわからなかったが私は少しドキドキしながらカーテンに手をかけた。