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弱ペダ短編集

第9章 私だけのサンタクロース(東堂尽八)


12月24日。
もうクリスマスイブが終わってしまいそうな頃、サンタクロースは突然私の目の前に現れた。

クリスマスイブ。
きっと今日はみんなデートやクリスマスパーティなど賑やかな1日を過ごしたことだろう。
だが私のクリスマスイブは特別なことなど何もない、極めて質素なものであった。
両親はクリスマスデートで海外に旅行。
友人たちは各々彼氏とデート。
恋人はご実家の経営されている旅館の手伝い。
ことごとく私の周りの人間は用事が入っていたようで特に何をするでもなくたった一人のこの家で母の用意してくれたクリスマスチキンを食べる日になってしまった。
時刻は夜の9時。
1日をダラダラと過ごし、これからの予定などは1ミリも入っていない私は少し早いが寝てしまおうと自室のベッドへ入り寝ようとしていた。
すると突然、私の携帯が鳴り響く。

「はい、もしもし」
<もしもし、茉璃?今大丈夫か?>

電話をかけて来たのは私の恋人である東堂尽八だ。
以前クリスマスの予定を聞かれた時に両親の話をしたので心配してかけてきてくれたのだろう。

<確かご両親は旅行に行かれているのだったな。では今は家に一人か。寂しくはないか?>

”寂しくなんてない”といったら嘘になる。
それは両親が不在ということに対してではなく尽八と過ごせなかったことがだ。
だが尽八がご実家の手伝いをしなくてはいけないのはわかっていたことだし、友人と予定が合わないのもクリスマスイブなのだから当然のことだろう。
それにここで私が”寂しい”といっても尽八が自分のことを責めてしまうだけだ。
私は尽八に”寂しくない”と返した。
尽八はそんな私になにか言いかけたが、電話の向こうで尽八を呼ぶ声が聞こえ私は尽八に手伝いに戻るようにと促した。
尽八はなんだか申し訳なさそうにまた明日電話するからと電話を切った。
こんな時、素直に”寂しい”と伝えることができたら少しは変わるのだろうか。
そんなことを考えながら私は眠りについた。
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