第8章 聖なる夜に(荒北靖友)
照れ隠しをするようにオレがクリスマスツリーに視線を戻すと茉璃は何かを思い出したかのようにごそごそと自分のカバンを漁りだした。
「はい、クリスマスプレゼント」
そう言いながら茉璃は綺麗にラッピングされたそれを開け取り出したものをふわりとオレの首にかけた。
「マフラー?」
「うん、だって靖友いつも首元寒そうなんだもん」
そう言いながら笑顔でオレの首に器用にマフラーを巻きつける。
オレが礼を伝えれば茉璃は先ほどよりもっと明るい笑顔をオレに向ける。
オレにとっては周りでチカチカしている電飾なんかより茉璃の笑顔の方が何倍も光り輝いている。
「ん?何靖友」
「るせェ」
可愛い顔で覗き込んでくる茉璃にたまらずキスをした。
すると茉璃の顔は真っ赤に染まる。
オレはそんな茉璃の手を握り腕にブレスレットを通した。
「や、靖友、これ」
「クリスマスプレゼントだよ…いらねェなら返せ」
そういうと茉璃はブンブンと首を横に振り嬉しそうに手首を眺める。
「ありがとう、靖友。一生大切にする!」
こんなに喜んでくれるのならしっかり用意しておいて良かった。
この点だけはアドバイスをくれた東堂と新開へ感謝しなくてはならない。
「じゃあ、そろそろ帰るか」
「そうだね、雪もひどくなって来たし」
俺たちは手を繋ぎ元来た道を戻って行った。