第8章 聖なる夜に(荒北靖友)
電車を乗り継いで約1時間半。
オレらはようやく目的地にたどり着いた。
クリスマスソングが流れ一面煌びやかに輝いているそこはまるで異世界にでも迷い込んだかのようだ。
茉璃なんて着いた瞬間からその景色にすっかり心を奪われたようだ。
「すごい!めちゃくちゃ綺麗だよ!ねぇ見て靖友!」
茉璃はガキのようにはしゃぎながらオレの手を引く。
一面に広がった光の海にはピカピカと光り輝く海の動物たち。
クリスマスカラーが鮮やかなプレゼント箱や様々な色の屋根の小さな家。
その全てが光り輝いている。
雑誌に大々的に特集が組まれているだけありその全てが圧巻だ。
2人で様々な場所を見て回っていると不意に鼻先にふわりと冷たいものが触れた。
「ん、雪か?」
「本当だ。雪が降って来ちゃったね」
そういうと茉璃は最後に見たいものがあるという。
そんな茉璃に連れられ光の虹のトンネルを通った先にあったのは暖かい色の電飾に包まれたどでかいクリスマスツリーだった。
「デケェな」
「ね、大きい、すごい綺麗」
オレはじっとクリスマスツリーを見つめる茉璃の顔を見る。
茉璃の目は電飾の光を写しキラキラと光り輝いていてスゲェ綺麗だ。
「…おめーの方が綺麗だよ」
「ん?なんか言った?」
「んでもねェよ!!!!っクション!!!」
盛大にくしゃみをしたオレを見て茉璃はくすくすと笑う。
我ながらなんてタイミングでくしゃみをしてるんだと突っ込みたくなる。