第8章 聖なる夜に(荒北靖友)
「たまにはもう少し遠出したっていいんじゃねェの」
オレの提案に驚きを隠せていない茉璃に雑誌のあるページを開いてみせる。
「ここ、行きたかったんじゃねェの」
そこは以前茉璃が行ってみたいと友人にこぼしていた場所だ。
福チャンを訪ねて茉璃のクラスに行った時、たまたま茉璃が友人とイルミネーションの話で盛り上がっているのを聞いた。
その場では福チャンと話していて茉璃の行きたいところまでは盗み聞くことはできなかったがその後その友人をとっ捕まえて茉璃の行きたいところを聞き出していたのだ。
「なんで知ってるの?っていうか、ここ日帰りで行ける距離ではあるけど結構遠いよ?いいの?」
「るせェ。んなもん勘に決まってんだろバァカ。てか、変な気遣ってんじゃねェよ」
またしてもぶっきらぼうに返しちまったが茉璃の表情はぱっと明るくなり嬉しそうに笑う。
その笑顔を見て提案してみて良かったと心底思う。
「ありがとう、靖友」
「おう」