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弱ペダ短編集

第8章 聖なる夜に(荒北靖友)


クリスマス。
それは世の中のバカどもが騒ぎ立てているだけのいけ好かねェイベントだ。
そりゃあガキの頃はそれなりに楽しみなイベントではあったがもう何年もクリスマスはオレにとっては無関係のイベントになっていた。

だが、今年は少し違うらしい。
先ほどから目をキラキラさせながらオレの彼女である茉璃はイルミネーション特集の掲載されている雑誌を何冊も持って来て広げている。

「おい、人の部屋で何を勝手に広げてくれてんの茉璃チャァン」
「今年は靖友と一緒にすぎせる初めてのクリスマスでしょ?だから、近場でいいから一緒にイルミネーション見に行きたいなーと思って。ダメ、かな?」

コイツのこの聞き方はズリィ。
オレがその上目遣いに弱いのをわかっててやってやがる。
というか、そもそもで茉璃がオレに頼みごとやわがままをいうことなんで滅多にない。
それなのにオレが断るわけがないだろう。

「…ダメじゃねェよ」
「やった!ありがとう靖友!靖友はどこがいいと思う?」

おめーといられるならオレにとってはどこだって最高の場所だ。
そうは思ってはいるがなかなか言葉にはできねェ。
ついつい

「どこでもいいんじゃナァイ。好きに決めろよ」

なんてぶっきらぼうに返しちまう。
でもそんなオレの態度に怒ることもせず茉璃は楽しそうにここはどうかな?なんて聞いてくる。
そんな茉璃が指をさしているのは近所で毎年行われている中規模のイルミネーション街だ。
きっと茉璃のことだからオレのこの面倒くさがりの性格のことを考えてここを選んだのだろう。
いつもそうだ。
茉璃はオレのことを第一に考えてくれて文句も言わずにそばにいてくれる。
だから、初めて2人で過ごすことのできるクリスマスぐらい特別なものにしてやりたかった。
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