第7章 木漏れ日の下で(新開隼人)
すると不意に食べている手が止まり私のお弁当に視線が向けられた。
「茉璃ちゃんはお弁当なんだな」
「うん」
「すげーうまそうだ」
「ほ、ほんと!?」
「自分で作ってんのかい?」
「うん、お弁当は毎日自分で作ってて…今日の卵焼きは今までで一番うまくできたんだ。良かったら新開くんもお一つ…」
ここまで言いかけ私は今自分が何をしようとしているのかに気がついた。
あろうことか先ほどまで自分が使用していた箸で卵焼きを掴み、あの新開くんの口元に運ぼうとしていたのだ。
「っ!ご、ごめん!私ったら何を!」
慌てて差し出していた手を引っ込めようとすると新開くんは私の腕を掴みそれを制止した。
そして差し出されたままになっている卵焼きをパクリと口にしたのだ。
「っ!」
「んん!うまいな!オレ、卵焼き好きなんだ」
「そ、そう?良かった」
新開くんはなんとも満足げな顔をしている。
それほど気に入ってもらえたなら私も嬉しい。
毎日ここでぼっち飯をするわけでもないのに私は毎日卵焼きは弁当に入れようと心に決めたのだった。