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弱ペダ短編集

第7章 木漏れ日の下で(新開隼人)


すると新開くんはウサ吉を抱いたまま使っていない方の手で私の腕を掴んだ。

「新開くん?」
「もう陽も落ちて道も暗い。家まで送るよ」
「え、いいよ。悪いし」
「まぁまぁ、遠慮するなよ。ウサ吉も世話になったしな。茉璃ちゃん徒歩通学だったよな?」
「う、うん」
「じゃあウサ吉小屋に戻して自転車取って来るから校門で待っててくれるかい?」

そう言いながら新開くんは自転車競技部の部室の方へと向かっていった。
私は悪いとは思いながらも新開くんのお言葉に甘え校門で待っていることにした。

「お待たせ」

新開くんは細い自転車を片手に押して戻って来た。

「さ、行こうか」

新開くんは私の隣を自転車を手で押したままペースを合わせて歩いてくれる。

「ありがとうね、新開くん」
「気にすんなよ。オレがしたくてしてることだからさ」

笑顔でそう言われるとなんだか顔が熱くなる。
そもそもで私は男性と話すことがあまりない。
ましてや人気者の新開くんだ。
クラスが一緒といっても業務連絡以外で新開くんと話したことはほとんどない。

「ん?どうしたんだ、考え込んで」
「えっ、あぁなんかこうして新開くんと帰ってるなんて信じられなくて、夢でも見てるのかなーって」
「オレは茉璃ちゃんともっと話してみたいって思ってるよ」

新開くんの言葉でさらに顔が熱くなる。

「どうした?なんか顔赤くないかい?」
「き、気のせいだよ」
「ハハッかわいいな茉璃ちゃんは」

どんどん熱くなっていく頰を押さえ下を向く。
そんなやりとりをしているとあっという間に家の前までたどり着いた。

「家、ここだから。送ってくれてありがとう」

お礼を伝えると新開くんは持って来ていた自転車に跨りこちらを見つめる。

「じゃあ、また明日な。おやすみ」

そう言うと手を銃の形にしてこちらを打ち走り去っていった。
その行動の意味はイマイチよくわからなかったが、先ほどから心臓が飛び出しそうなほどドキドキとうるさい。
こんな経験をしたことのない私は原因がなんなのかわからずモヤモヤとした夜を過ごすのだった。
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