• テキストサイズ

弱ペダ短編集

第7章 木漏れ日の下で(新開隼人)


ある日の放課後。
私は学校の裏庭にある大きな木の下で大好きな本を読んでいた。
毎日この場所で読書をするのが私の日課だ。
ここはあまり人が来ることがなく静かに本が読める。
キラキラと葉と葉の隙間から漏れる光や爽やかに吹く風、その全てが居心地が良い。
そんな私のお気に入りの場所に今日は妙な来客があった。

「あれ?ウサギさん。どこから来たの?」

そう話しかけてみるとウサギは私の正座されている足の上にちょこんと乗った。
優しく背中を撫でて見るとウサギはなんとも気持ちの良さそうな表情を浮かべる。
まだ少し肌寒いこの季節、足の上に乗ったウサギはポカポカしていて温かい。
私はウサギを足の上に乗せたまま再び本へと視線を戻した。

「ふぅ、読み終わった…そろそろ帰ろうかな。ってあれ?」

よく見るとウサギは私の足の上で気持ち良さそうに眠ってしまっている。
背中を撫でながら空を見上げて見ると、あたりはもうオレンジ色に染まって来ている。

「おーい、ウサギさん、そろそろお家に帰ろうよ」

そうウサギに話しかけてみると誰かの影で急に手元が暗くなった。

「ウサ吉、こんなところにいたのか、探したぞ」

その声の方を見上げるとオレンジ色の髪の毛をふわふわとさせ何か棒状のお菓子のようなものを咥えた男子生徒がこちらを見おろしていた。

「あれ?茉璃ちゃん。ウサ吉の面倒を見ててくれたんだね、サンキュー」

そう話しかけて来たのは同じクラスの新開隼人くん。
クラスでもかっこいいと噂の人気者だ。

「新開くん。この子ウサ吉くんっていうんだね」
「あぁ。ウサ吉のやつ、あまり人に懐かないのに珍しいな」
「え?そうなの?自分から乗って来てたけど」
「ヒュウ。ウサ吉のやつ、茉璃ちゃんのこと相当気に入ったんだな」
「そ、そうなのか」

そんなことを新開くんと話しているとあっという間にあたりは暗くなってしまっていた。
するとウサ吉は急に起き、あたりをキョロキョロと見回すと新開くんの胸に飛び込んだ。

「ハハッ、どうしたんだウサ吉」

その姿はなんとも可愛らしい。
絵になるとはこのことだろう。
新開くんとウサ吉の信頼関係が見て取れた。

「じゃあ、私は帰るね」

もう少しこの光景を見ていたかった気もするがどんどん帰りが遅くなっていってしまうので私は帰り支度を済ませ立ち上がる。
/ 74ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp