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弱ペダ短編集

第6章 幼馴染の距離(巻島裕介)


「ハァ…なんでオレはこんなところにいるショ」

日曜日、いつもあまり乗ることのない電車を乗り継いで例の遊園地へ来ていた。
しかも男一人で。

「関係ねーって言われてんのにな…クハッ、これじゃあストーカーショ」

改めて自分の行動を恥じていると向こうから茉璃が歩いているのが見えた。
慌てて先ほどまで座っていたベンチの裏にある木の陰に隠れるとあろうことか茉璃たちはそのベンチに腰掛けた。

「ねーねー、ここの観覧車のジンクスって知ってる?」

茉璃の友人は突然そんなことを3人に問いかける。
すると男2人はそのことを知っていたようで話を続けた。

「好きな人と乗って頂点に来た時にキスすると永遠に結ばれるってやつだろ?」
「そ、そんなのあったんだね」

茉璃の反応からしてこのことは知らなかったのだろう。
少し覗いて見てみるとあからさまに戸惑っているように見える。

「その、田中くん…私と一緒に乗ってくれませんか?」
「奈々ちゃん、いいよ。一緒に乗ろう」

友人の誘いに田中はOKをだし2人で仲良く話し出す。
すると高橋は茉璃の肩に腕を回し自分らも一緒に乗ろうと話しかける。

「あ、あの…私喉乾いちゃったから飲み物買ってくるね!」

茉璃はするりと高橋の腕の中から抜けると逃げるように走って何処かへ行ってしまった。
オレは他の3人に気がつかれないように茉璃を追いかける。
しかし結構遠くまで走って行ってしまったようでなかなか見つけることができない。
すると向こうのほうに高橋の姿を見つけた。
どうやら誰かと話をしているようだ。

気になりその様子を見に行くと案の定茉璃と話しているようだった。

「田中達、もう先に観覧車行っちゃったよ?俺たちも早く乗ろうよ」
「えっと…私は…」
「今日のダブルデート、来てくれたってことは俺に気があるってことだろ?じゃあいいじゃん」
「いや、私はそんなつもりじゃ…」
「いいから早く行こう。俺のレベルならもっと上の子も狙えるかもしれないけど、茉璃ちゃんってなんでも従ってくれそうじゃん。そこがいいなと思ってたんだよね」

高橋は強引に茉璃の腕を掴み引っ張って行く。

「ちょっ…腕痛い…」
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