第6章 幼馴染の距離(巻島裕介)
気持ちを落ち着け飲みものを持ち部屋へ戻ると茉璃は勉強をやめオレのベッドに転がっていた。
「おい、勉強はどうした」
「裕介遅いんだもん。もう終わったよ」
「わかんねーところはどうしたショ」
「教科書見たら何とかなった」
「じゃあ最初からそうしろよ。ってか、終わったならそんなところで寝てないでさっさと自分の部屋に戻るショ」
「えー、ちょっと休憩」
オレはため息を吐くと茉璃が転がっているベッドを背もたれにして座った。
それにしてもこいつはなんて無防備なのだろうか。
オレのことを男だなんて全く思っていないのだろう。
制服のままで転がるので今にもスカートの中身が見えてしまいそうだ。
変なことを想像しているとふいに茉璃がオレの髪の毛にフワッと触れる。
これはこいつの癖のようなものだ。
昔からオレといると急に髪の毛に指を絡ませクルクルと遊んでくる。
茉璃以外にこんなことをされたらキレて嫌がるだろうがこいつにされるのは心地よい。
これも惚れた弱みというやつだろうか。
「なんショ」
「裕介の部屋、落ち着くなって」
”オレのそば”じゃなくて”部屋”かと少し心の中で苦笑いをしていると茉璃が思いがけない言葉を口にする。
「裕介も一緒にこっちにきて寝る?」
突然の茉璃の言葉に驚き振り向くと茉璃はいつの間にか上半身を起こしていて自らの隣をトントンと叩く。
その姿はなんとも色っぽい。
ここに来いとでもいうその仕草にオレの理性は崩壊寸前だ。
「来ないの?」
そう上目遣いでこちらを見つめる。
其の瞬間、オレの中で何かがプチっと切れたのがわかった。