第6章 幼馴染の距離(巻島裕介)
「おじゃましまーす。裕介、宿題教えて欲しいところがあるんだけど」
そう言いながらオレの部屋へと勝手に入ってきたのは幼馴染の茉璃だ。
いつもこうして誰の断りもなくオレの部屋へと侵入してくる。
しかもベランダからだ。
オレの家と茉璃の家は隣同士で部屋が向かいということもありいつもベランダから飛び移ってくるのだ。
「勝手に入ってくるなっショ!いつもいつもベランダから入ってきやがって!」
「えーいいじゃん。裕介だってベランダの窓の鍵、いつも開けて待っててくれてるじゃん」
「っ!べ、別に待ってなんかいねーショ!」
「待っててくれてるんじゃないの?」
茉璃は上目遣いでこちらを見つめながら訪ねてくる。
オレがこの表情に弱いということをわかっていてやっているんだろう。
「そ、その目には騙されねーショ!」
「ちぇ」
茉璃はふてくされたような表情はしているが全く悔しそうでも何でもない。
そんな表情にため息をつきながらオレが机の前に座ると茉璃はオレの真横に座り教科書を広げ始めた。
「別に隣じゃなくてもいいショ」
「こっちのが教科書見やすいし」
「そうかよ。で、どこがわかんねーショ」
「えーっと、ここ」
教科書を覗き込む茉璃の顔がグッとオレの方に近づいてくる。
オレの心臓はもう爆発寸前だ。
それもそうだ。
オレは小学生の頃からずっとこいつのことが好きなのだから。
「ん?裕介どうしたの?」
オレの気持ちを知ってか知らずかこいつはオレの顔を覗き込んでくる。
「っ!な、何でもねーショ。飲み物とってくるわ」
オレは赤くなっているであろう顔を隠すように部屋を出た。