第4章 赤頭の彼(鳴子章吉)
家に着くと私は今日の出来事を思い出していた。
(鳴子くん、今日かっこよかったな。自分より大きな相手に物怖じせずに立ち向かってくれるなんて。なんだろ、ギャップ萌え?)
そんなことを考えているといつの間にか心臓が高鳴っていることに気がつく。
なぜこんなに胸が高鳴っているのかわからない。
ちょっと暇があれば鳴子くんのことを考えてしまっている。
週明けの昼休み。
「おい。なんで俺の後ろに隠れてるショ」
「い、いやぁ…なんかちょっと、今は鳴子くんの顔見られないと言うか…なんと言うか…」
私は鳴子くんが教室に来る前に巻島くんの後ろに隠れていた。
「なんや、巻島さん今日は茉璃先輩はおらんのですか?」
「あ?富永ならここに…イテッ!!」
私の居場所をバラそうとする巻島くんの長い髪を引っ張る。
すると巻島くんは一瞬こちらを睨んだように見えたがなんとかごまかしてくれた。
そのおかげで鳴子くんは諦めたように教室から去って行く。
私はそれを確認してから巻島くんの後ろから出た。
「クハッ。お前顔真っ赤ショ。なんだ?本気で鳴子に惚れでもしたか?」
「っ!う、うるさい!!」
顔を真っ赤にしていい返す私を見て巻島くんはさらにケラケラと笑う。
本当は心臓が高鳴る理由もわかっている。
でもまだ気持ちに整理がついていないのだ。
「まぁせいぜい今週末の花火大会までにはなんとかするショ」
「そうか!今週末…ま、巻島くん今週末の予定は…?」
「俺は行かねーショ」
「そんなこと言わずに…」
「無理ショ」
しょぼくれる私を見て巻島くんは少し呆れたような表情でこちらを見るのだった。