第2章 壱ノ刻~昇進~
ふと目が醒めてしまった。
昼に砕蜂ちゃんと手合わせしたから、疲れてぐっすり眠れると思ったんだけど。
私は、隊舎を出て夜の瀞霊廷を歩いた。
誰もいない瀞霊廷。静寂の時間が私を包む。
建物の明かりも無く、ただ月明かりに照らされた道を歩いていた。
目的もなくふらふらと歩くのも良い。
あと二日で私は零番隊の隊長になる。零番隊がどれ程の強さで構成されているかは分からないが、新人の私は振り落とされないように頑張らないと。
そのためにも、まだまだ強くならなくちゃいけない。
強くなる為の近道は『斬』。つまり斬魄刀を理解するのが大切だということ。
眠れないんだし、久しぶりに斬魄刀と対話でもしてみようかな。
私は、瀞霊廷の地下に来た。
二番隊にいた頃、夜一さんと特訓した遊び場だ。
あと、浦原喜助くんとも特訓したっけ。
もう彼も十二番隊の隊長。技術開発局とかいう訳分からないものを設立したと聞いた。
出会った頃から、裏の読めない人だなぁ…って思っていたけど、不思議と嫌いになれない男性だった。
二番隊第三部隊“檻理隊”
それの隊長を務めていた喜助くん。あの『蛆虫の巣』を取り纏める隊長…か。
その程度で終わるには惜しい男だと思っていたけど、十二番隊になって更に惹かれるようになっちゃったなぁ。
っと、昔に思いを馳せる為にここに来た訳じゃない。
斬魄刀との対話の為にここに来たんだ。
「久々にやるなぁ…」
私は斬魄刀に手をかけた。鞘から刀身を抜き、そのまま目の前の岩に刺し、私は“彼女”の目の前に座った。
「………」
精神を統一し、彼女のことを考える。精神世界に入った。
そこは遥か彼方、私達死神ですら見ることが出来ない雲の上の世界。
彼女はそんな雲の上で、寝転がっていたが、私を見た瞬間飛び付いて来た。
『久しぶりっ!懍。寂しかったぁ~』
「うわっ!急に抱き着かないでよ。びっくりするじゃん」
『だぁってぇ~』
駄々をコネる少女となんら変わりない姿、そこには確かに私の斬魄刀の姿があった。
「私さ…」
『零番隊に行くんでしょ?大丈夫だよ。懍の強さなら問題ないよ』
「それでも…ちょっと心配でさ」
私は、心配になっていること、不安なこと、怖いことを全て伝えた。