第9章 捌ノ刻~百年来の友~
恋「背面適合113! 神経結合率88.5! 朽木ルキア…見ィ-つけた!」
「…朽木隊長」
白「…何も言うな。私は定められた規律に従う。例外はない」
「…そうですか」
空座町。かつて私が来たこの場所で、新たな事件が起こった。それは、人間への死神能力の譲渡。本来それは重罪である。
(でも…意味もなくルキアちゃんがするとは思えない)
ルキアちゃんは朽木隊長と同じく朽木家である。朽木家は代々規律を重んじる貴族。死神の範となる信念があるその家で、少なくとも数十年は育ってきたはず。それなのにわざわざ重罪を犯すリスクを負わなければならないのか。それはきっと別の理由があったから。
例えば…人間に譲渡"しなければならない"状況に追い詰められていた場合である。この仮説がシンプルだが最も合理的である。
恋次くんも朽木隊長も…どんな思いなんだろう。
恋「よォ! 何処に行くんだよルキア」
ル「…貴様、阿散井恋次か!?」
恋「全く残念だぜ。朽木家に拾われたお前がこんなことになるなんてなぁ。なあ! お二人さん!!」
ル「…!! 白哉兄様…懍殿!!」
恋「俺たちに処刑を任すなんて中央四十六室も優しい奴らだ。よォ…俺たちはお前から死神の力を奪った奴を殺す。大人しく吐きな…さもなくば…斬るぜ!」
その時だった。左後方から白い矢が恋次くん目掛けて飛んできた。間一髪で交わしたが、その矢には少し違和感を感じた。
(…まさか滅却師!?)
その眼鏡を掛けた男は…
雨「丸腰の女の子相手に武器を持つ三人…見ていてあまり気持ちの良いもんじゃないね。僕はあまり好きじゃないな…そういうの」
霊子で出来た弓と矢。いわば外から吸収する攻撃手段。紛れもない滅却師だ。だとしたら何故? 滅却師は既に全滅したはず…生き残りがいたのか? それとも…
何やら恋次くんと滅却師は会話しているようだが、いろいろとまとめなければ頭がおかしくなりそう。実際ルキアちゃんが捕らえる理由は、死神能力の譲渡を犯したから。そして目の前には滅却師。滅却師は死神によって殲滅させられているため、元とはいえ死神のルキアちゃんに手を貸す必要があるのだろうか。そもそも、死神能力を受け取った人間の死神は何処にいるのか。
滅却師はいつの間にか倒れていた。そして新たな"死神"がやって来た。