第9章 捌ノ刻~百年来の友~
夜「いやー、久しぶりじゃのう」
あっけらかんと夜一さんは喋る。約百年ぶりの再会なのに、感動のかの字も感じさせない飄々とした姿勢。見習いたい。
「お久しぶりです。お元気で何よりです」
夜「それはこっちの台詞じゃ。息災で安心したぞ」
浦原商店の一室に通されて交わされる会話はどこか安心感があった。雰囲気がどことなく昔と似ているんだろう。
ふと、畳のいい香りのする和室で、普通であれば感じない刺すような鋭い視線を受けた。
夜「……」
それは明らかに夜一さんから発せられ、私のことを…主に胸を見ていた。浦原商店の人は胸をガン見することが普通だと思っているのでしょうか。誠に遺憾ですね。
「何見てるんですか」
夜「いや…あまり成長しておらぬと思っておったところじゃ」
至極真面目な声音だった。その時も私の胸を見ていた。何故再会した人達に胸を見られるのだろう。
もしかして私の胸は、男女構わず全てを惹き付けるフェロモンが発せられているのかもしれない。あまり嬉しくない。
「まあ…夜一さんには負けますよ。だってプロポーション凄いもん、夜一さん」
大声で夜一さんは笑った。胸を揺らしながら。
現世に来て少し気になったことがある。それは、ルキアちゃんの霊圧が感じにくくなったことだ。ここ数日、浦原商店に寝泊まりしているが、僅かながら日に日に霊圧が弱くなっていくのを感じる。現世という、慣れない環境での任務だからか、あるいは別の事象か。
もう一つ。ルキアちゃん以外に感じたことのない大きな霊圧があることだ。護廷隊士の霊圧ではない別の何か。ここまで大きいと死神さえ目視できるのではないかと思うほど。しかし、霊圧を抑えているとは感じず、ただ垂れ流して生活している様子。もしかしたら単に霊圧が強いだけの一般人かもしれない。
(…お腹空いたな)
現世であろうと尸魂界であろうと、小腹は空く。幸いにもここは浦原商店。駄菓子は沢山あり、味も楽しめる。
店頭で寝ている黒猫を無視して、駄菓子を戴く。「勝手に食べちゃっていいッスよ!」と言われたので遠慮はしない。
外では紬屋雨ちゃんと花刈ジン太くんがわちゃわちゃしている。カワイイ。平和である。