第8章 漆ノ刻~運命の夜~
それにあの斬魄刀…雷切…。ただ刀身が青く光っているように見えるが…。
「阿散井さん。この斬魄刀のこと…どんな風に見えてる?」
恋「どんな…? …ただ青く光ったようにしか見えませんね」
「よく見えてますね。答えてくださりありがとうございます。もうひとつ質問いいですか?」
(…なんだ? 何を考えてるんだ?)
「戦場では、1人にだけ集中するのはよくないと思いませんか?」
恋「…は?」
奴が何を言っているのか理解できなかった。しかし、その質問の意図はすぐに分かった。俺の真隣に、巫女服のような姿をした黒い髪と黒い瞳の少女が《雷切》を持ってこちらを見つめていた。
(…!? いつからそこにッ!?)
俺が逃げるという行動をとるよりも早く、その少女は雷切を天へと掲げた。
『一ノ陣"神解け"』
そのような可愛らしい声が発せられると、俺の頭上には雷雲が立ち込めていた。それに気づいた時には、既に轟音と共に世界が白く明転した。
阿散井さんが地面に伸びている。まあ死んでないし大丈夫でしょ。念のため回復させておこう。
「四ノ陣"五月雨"」
辺りに恵みの雨が降る。これできっと怪我も治るだろう。…しかし、十一番隊の第六席…か。席官ながら相当な実力がある。もっと磨けば素晴らしい逸材となるのは間違いないだろう。
『…すぐ終わっちゃったね』
「今の彼の実力を見るだけだったし…もういいかなって」
『ちぇ…つまんないの』
「むしろ私は面白かったけど」
『最初っから私を戦わせてよ』
「《雷切》が戦ったらすぐに終わらせちゃうじゃん」
久しぶりに姿を現した彼女はテンションが高い。さらに戦闘中での呼び出しだったため血が滾っているようだ。怖い少女だよこの子。
「わざわざありがとうね」
『別にいいけどさ。私呼ぶ必要あった?』
「なかったけどあったよ」
『そう。なら良かった』
彼女はそう言って消えていった。私のこのテキトーな返事に納得したんだろうか。いや、何一つ納得してないだろうが消えていったんだろう。物分りがいい子で助かっちゃうよ。
伸びている彼は頑丈そうだ。たぶん、ちょっとやそっとじゃやられない男なんだろうな。取り敢えず介抱しておいてあげよう。