第8章 漆ノ刻~運命の夜~
煙幕の中から声が響いた。
恋「咆えろ《蛇尾丸》!!」
煙幕がその解号の霊圧で晴れる。空を切り、斬魄刀の刀身が私に向かって放たれた。
(…蛇腹剣か)
難なくそれを受け止めはじき返す。さらに連撃で刀身が向かってくるも、それを避けて距離をとる。
「面白い斬魄刀だね。中遠距離の斬魄刀ってこと?」
恋「ええ。これが俺の斬魄刀《蛇尾丸》です。近距離で戦うよりかは、中距離で戦ってこっちのペースに持ち込もうって感じッスかね」
「ヒット&アウェイが得意ってことね。…刀も大きいし一撃が重いのも納得」
恋「…分析だけじゃ意味ねぇッスよ。咆えろ!!」
空中に飛んだ彼は、空から刀身を伸ばしたその《蛇尾丸》を浴びせてきた。一、二、三連撃を放つ。もちろん、その全てを受け止めて無傷のままで彼と彼の斬魄刀を見る。
(…刀身を伸ばせるなら伸ばしたままで戦えばいいものの、わざわざ連節を戻すってことは最大三連撃まで…って感じかな)
それにしても十一番隊は物理攻撃のスペシャリストを育成しているのか、割と単純な斬魄刀を所持している人たちが多い。強力だがその分弱点が発見され安い。
「…一度伸びた刀身はそう素早く戻らない。その間に間合いに入られたらどうするの? それに、連節の部分が壊されたら…どんな対策をとるつもり?」
恋「それは…」
「単純で扱いやすい斬魄刀だけど、隙と弱点が露呈しやすい。まあ、純粋な実力差があればそんなの関係ないけどね」
恋「……?」
「我に伏せ《雷切》」
更木隊長が敗れた。最初に聞いた時は信じられなかった。そんな簡単にやられる人じゃあねぇ。さらに隊士に聞いた情報から余計に信じられなかった。みんな口々に『金髪の女に一振りで敗れた』って…。本当に有り得るのか…更木隊長がそんな奴に敗れるなんて。
ただ、今回で確信に変わった。蛇尾丸を振り回しても表情ひとつ変えずにコッチを分析してる。たった数撃受けただけですぐに蛇尾丸の弱点を指摘した。それに…更木隊長とは違って霊圧で威嚇する感じじゃねぇ。むしろ霊圧を全く感じない…何か余裕そうで…少しでも気を抜けばあの赤い瞳に飲み込まれてしまうような感覚に陥る。…凄ぇ女の人だ。