第8章 漆ノ刻~運命の夜~
恋「俺を…強くしてください!」
「はあ?」
初対面の死神に頭を下げられることは今までなかった。とても困惑している。十一番隊なのに丁寧な人だ。まずそこに驚くけどね。
恋「俺はある男を超えたいんだ。そのためにも俺は強くならなきゃならねぇ」
「…第六席って…充分強いと思いますけど」
恋「更木隊長を一振りで倒したっていうアンタから教えてもらったら…俺はもっと強くなれるかもしれねぇんだ。頼む!」
さらに深く頭を下げられる。この短時間で凄く熱血な人だってことが分かった。そこまでして超えたい目標があるのは素晴らしいことだ。その目標に向かって走っていられるからね。私にはそんな存在がいないから少し羨ましいかも…。
「…わかりました。いいですよ」
ルキアちゃんも志波副隊長の教授で腕をあげた。そんな志波副隊長に倣って、今度は私がこの十一番隊の阿散井恋次って人に教えてあげよう。教えたことでその目標の人を超せたら私も嬉しいしね。それにしても、本当に丁寧人だ。
恋「本当ですか!? …ありがとうございますッ!!」
「いやいや…でも、本当に私でいいの?」
恋「ええ。瀞霊廷内でも噂になってますから。『隊長格かそれを超える死神』だって」
(…いつに間にそんな噂が…)
瀞霊廷から少し離れた場所―
「…阿散井さんからどうぞ」
恋「じゃあ遠慮なく…いきますよッ!」
互いに斬魄刀を抜き、鍛練することになった。いつかの副隊長さんとの戦いを思い出す。ただ、あの副隊長とはだいぶ性格が違った戦い方をするな。猪突猛進で真っ直ぐな戦い方だ。嫌いじゃない。
恋「…おりゃッ!!」
やはり突っ込んできたか。十一番隊らしい。ただ、力対力だったら負ける気はしない。斬魄刀で軽々と受け止め阿散井さんごとはじき返す。彼の身体は宙に浮くが、すぐに姿勢を整えて再び私に向かってきた。
(…あまり芸がないなぁ)
「破道の三十一"赤火砲"」
威力を弱めた赤火砲で彼に向かって放つ。一直線に飛んでいき彼にぶつかり、ドンッ! という音と衝撃が伝わる。ぶつかった際に生じた煙幕が彼の姿を眩ませた。そのまま突進してくるのか煙幕が晴れるまで待つのか…