第8章 漆ノ刻~運命の夜~
朽木邸―
朽木邸にやってきた。その目的は明らかだ。朽木隊長に通され、ルキアちゃんの私室へと歩みを進める。
「…ルキアちゃんは息災ですか?」
白「ああ…心配するな。しっかりと食べているし、睡眠もとらせている」
「そうですか…よかった」
あの日から1ヶ月。すぐに癒えるわけではないだろうが、このことを乗り越えない限り、永遠に塞がったままだ。閉じきった心を開かせるのは容易ではないが…。
朽木隊長がルキアちゃんの部屋の前まで案内してくれた。
白「…私からも、ルキアのことを頼む」
そう言い残し、その場から去った。最近はよく頼まれ事を受けるなぁ。それも、ルキアちゃんのことだし…。
部屋の前から声をかける。
「…ルキアちゃん? 元気?」
……………。返事はないか。仕方ないな。
「…入るよ?」
障子に手を掛け、彼女の部屋の扉を開ける。外の光が差し込まない暗い空間だ。…奥の方に彼女が座っている。重苦しく深く暗い…。
彼女に向かって歩き出し、後ろに座る。
「……もう少し太陽の光を入れたら? それだけでも明るくなれるよきっと。取り敢えず窓でも開けてみようよ」
ル「……」
「…どこか茶屋でも行く? 白玉でも食べに行こうか…ね?」
…ちくしょう。こういう重苦しい雰囲気とか苦手なんだよ。…なんか気まずいじゃないか。
ル「……私は…」
「…ん?」
ル「…あの時、私がアナタに担がれて逃げたのは…海燕殿と戦うのが怖かったからです。…あの時、私が戻ってきたのは…逃げる自分が恐ろしくなったからです」
「……」
ル「…あの時、私が海燕殿に刃を突き立てたのは…海燕殿が苦しんでいる姿を見るのに耐えられなかったからです」
「……」
ル「…結局、私が救ったのは私自身でした…。私は…私が醜い…!」
「…そう」
彼女の声を聞けてよかった。私はルキアちゃんを後ろから優しく抱きしめる。
「…私も自分が醜いよ。…何か救う手立てがあったんじゃないか…何か方法が…って。でもね…1人で抱え込まなくていいんだよ。彼は立派に戦っていた。…ルキアちゃんも見てたでしょ? 自分の誇りをかけて…ね。こんな結果でも、悔いはなかったと思うよ。…まあ、私たちを残して勝手にいなくなるのは褒められないところだけど」
ル「…でも」