第7章 陸ノ刻~荒んだ過去~
いつものように、学院に通い死神としての心得を習い、普段と変わらない日常を過ごしていた。特進学級で、トップの成績であることを周りの学友から認められ、心地よい生活を送っていたある日のこと。
それは、学院から自分の神社に帰ろうと帰路に着いた時だった。
(…そういえば今日は奉納の舞をしないといけない日だったっけ。めんどくさいな…)
雲ひとつない晴天の夜空。周りに光がないからだろう。満月と星が綺麗に煌々と輝いている。こんな思いも一緒に彼方へと消し飛ばしてくれないか、神様よ。神職に産まれたことは誇りに思っているが、とてもとても面倒である。
そんな考えが頭いっぱいに広がった。…不意に周りの草むらが不規則な音をたて、不気味な雰囲気を作り出した。風は吹いていない、快晴無風。少しの違和感を感じながらも自社へと歩みを進めていた時―
ガサガサと音をたてた草むらから、数人の男が飛び出し襲ってきた。
(…なっ!?)
咄嗟のことで反応に遅れ、少し傷を負ったものの、1人を撃退し一時の難を逃れた。
「…なんだよ、あんたら」
ひとりひとり見つめるも、私の知らない顔だった。しかし、その衣服からは同じ真央霊術院の学生であることが分かる。…何が目的かは理解できないが、とりあえず敵意のようなものが向けられていることは分かる。
数名に囲まれている状況は初めてのことで、何に集中すればいいのか分からない。そのひとりがおもむろに斬魄刀を抜いた。それに呼応するように、他の学生も斬魄刀を抜き始めた。致し方なしと、私も斬魄刀に手をかけようとした時、かつてのアジューカス一件を思い出す。
確かに、あれから修行を重ねて、多少は力をセーブすることが出来るようになったものの、未だ制御できない部分が大きい。今、下手に《雷切》を扱おうとすれば、この学生の命をも奪いかねない。何故私を襲うかは知らないが、襲ってきた相手の命を一方的に奪おうとするほど、今の私は落ちぶれてはいない。
そんな彼らは、口々に私に対する思いを述べ始めた。
『…意味が分かんねぇんだよ。お前…ただの女じゃねぇだろ…』
『俺らは見たんだよ…お前が訳分かんねぇ姿になってたのを…』
『ただの死神じゃねぇだろ…お前』
『怖いんだよ…そんなヤツがのうのうと暮らしてるのが…』