第7章 陸ノ刻~荒んだ過去~
数年後―
今日は生憎の雨。雷も鳴っている。まあ、私にとっては恵みの雷だけどね。
京「最近、天気に恵まれないねぇ」
浮「そうだな。こういう天気が続くと、気分が滅入ってしまう…」
「…2人は晴れの方がいいの?」
浮「ああ。まあ、空気が美味しいからな」
京「ボクは…どっちでもいいかな」
『なんだ? 神崎が晴れにしてくれるのか?』
『いいねぇ、雷神様に頼んで晴れにしてくれよ』
『どうせなら巫女服で舞ってくれよ。目に焼き付けてぇからさ』
京「あ! ソイツはいい。懍ちゃん、ボクからもお願いするよ。あわよくば舞ってる時に、こう…ポロリーンって感じで」
「うるせぇ。そんなことの為に舞うつもりはないから」
京「ちぇ…つれないなぁ」
浮「お前ら…」
あのアジューカスの一件で、真央霊術院の上層部からはお褒めの言葉を受けた。別に、褒めてもらいたいとか成績を上げたいとか関係なかった。私の斬魄刀の力を試したかった…その思いだけで。ただ、その実績はたちまち真央霊術院に広がった。もともと私の噂の広がりは早かったから、今回の件も異常な早さで学院内に広まった。
この実績で、どうやらただの"ヤバいヤツ"という認識は消されたようで、逆に"スゴいヤツ"という認識に塗り替えられたようだった。今まで、根も葉もない噂を広めていた奴らが、急に手のひら返しで仲良くし始めたことは腹立たしかったが、今では特に気にしていない。むしろ、京楽と浮竹の柔和な雰囲気もあってか、ちゃんとした学友として仲良くできている。そう思いたい。
一方で、アジューカスを退治したという噂は悪い方向にも流れた。『ただの学生がアジューカスを退治できる筈がない』『アイツはやっぱりヤバいヤツなんだ』『そうやって、英雄伝のように俺たちを油断させておくつもりなんだ』などといった噂も広まった。ただ、それはほんの一部のヤツらが騒いでいるだけだ。特に気にすることもないだろう。
京楽からは『だんだん棘が無くなって丸くなってきた気がするよ』と言われ、浮竹からは『失礼だけど、最初は無愛想だと思っていた。だけど今は、笑顔が増えて柔らかくなってきたな』と言われた。入学当初から関わってきてくれた2人から、プラスの印象を持たれていることに、密かに喜びを感じていた。