第7章 陸ノ刻~荒んだ過去~
現世 空座町―
徐々に近代化していることが分かる、歴史を感じるこの町の虚退治が私たちに与えられた任務だった。
真央霊術院に入学する際に、仮の斬魄刀を与えられる。無事に卒業し死神として護廷隊に配属される時に、正式に自分の斬魄刀として"浅打"を授与される。つまり、誰も自分自身の斬魄刀を保持していないことになる。"私を除いて"。
『…特に見当たりませんね』
『そ、そうですね。…神崎さんは、何か分かりますか?』
「…別に」
『そ、そうですよね…』
そもそも学生を現世に放り出して、真央霊術院の先生たちは何をしているんだろうか。まだまだ未熟なヤツもいるだろうに、こんな簡単に命を落としそうなことをやらせるのか? 危なくないか?
(…くそ、面倒だな。サボって帰ってしまおうか…)
ここには何もいない。いても問題ないなら、コイツらと一緒にいる意味もないだろう。
その時だった。ドッと身体が何かに押し潰されるほど重い霊圧を感じとった。
『…こ、この霊圧って』
『た、ただの虚じゃない…ですよね』
「………」
感じ取る限り、ギリアン以上の虚であるアジューカスの可能性が高い。…まあ、私は退治出来るだろうがコイツらは…。
『ど、どうします? どうすれば…』
『こんなヤバいヤツなんて、聞いてねぇぞ…』
狼狽えているところを見ると、まだ自分に自信がないんだろう。割と大きい霊圧に、多少の動揺はしているものの、冷静に考えられているならセンスはいい方だろう。というか、特進学級ならば、落ち着いた対応をとれなきゃダメだろう。
「…あんたら、ここにいろ」
『え?』
私はその霊圧に向かって行く。私も含まれるが、まだ未熟の学生が集まったところで大虚を退治できるかと問われれば、実戦もしたことがない烏合の衆が挑んだところで退治どころか被害が出ることは容易に予想がつく。本来ならば、すぐに真央霊術院に報告して待つべきなんだろうが、そんな余裕はない。アジューカスは知能がない訳ではない。むしろ、大虚よりも知能がある虚だからこそ厄介なのだ。我々に与えられた任務はこの町の虚退治。私の斬魄刀の力を試すのに丁度いい相手が来たんだ。利用しない手はないだろう。