第7章 陸ノ刻~荒んだ過去~
「80地区の女…見たか?」
「ああ、あの金髪のヤツだろ」
「学院に80地区出身のヤツってアイツしかいないらしいぜ」
「どんだけ荒んだ場所で生きてたんだって話だよな」
「可哀想よね。生まれる場所は選べないっていうけど…」
「でも、現世で相当罪を重ねてたから更木出身な訳でしょ? 自業自得よ」
「なんでも、女ってことを利用して、いろんな人達を殺害してるって噂よ…」
「マジかよ…やべぇな。近寄らない方がいいな」
「あの赤い瞳に魅入られたら、二度と抜け出せなくなって惨殺されるって噂もあるぜ…」
「赤い瞳って…もしかしたら血の色なんじゃ…」
「怖っ…」
「見た目は美人なんだけどな…」
「わかる。もう少しマシなヤツだったら俺の女にしたいぜ」
「割とスタイルいいしな。…頼めばヤらせてくれるんじゃね?」
「やめとけ、多分殺されるぞ」
いろいろ根も葉もない噂が学院に流れている。今日もアイツらにとっては平和な一日なんだろうな。私にだけ負の思いをぶつければいいだけなんだし。私だけが悪者扱いだ。…そんな生活にも慣れてきてしまった。鉛色の空は今日も変わらず、私を見下しているようだ。
浮「よう! 神崎。今日も浮かない顔をしているな」
京「綺麗な顔が台無し。もっと明るくいこうよ」
「……」
コイツらだけは変わらない。毎日私に話しかけてくれる。不思議なヤツらだ。…居心地がいい。
浮「今日は現世で虚退治だそうだ」
「急に実戦かよ…お前ら大丈夫なのか?」
京「ボクたちをナメてもらっちゃ困るなぁ。懍ちゃんには及ばないかもしれないけど、これでも特進学級の学生だからね」
浮「むしろ神崎の方が心配だ。変に力まずいつも通りで頼むぞ?」
「…分かってるよ」
現世―
数人のグループを組み、"調節者"として虚の退治を行う実戦型の授業だ。願わくば、浮竹と京楽と一緒になりたかったが、その思いは届かなかったようだ。一度も話したこともない連中と一緒のグループになった。そもそも、学院で喋ったことのあるヤツは、京楽と浮竹と先生しかいない。
『よ、よろしくお願いします…』
『まあ、なんだ。生きて帰ろうぜ』
「…そうですね」
声色や雰囲気で分かる。コイツらも騒々しいヤツらと変わらない。ただ出生や身分で決めるヤツだってことが…。