第6章 伍ノ刻~友の結び~
夕方―
カラスが鳴き、いい子はお家に帰る時間帯だ。現世にいた頃の…生前の私はどんな存在だったのだろうか。まあ、更木地区出身だから、ロクな奴じゃなかったのは確かだけどね。
(…特にする事ないし、自室に帰ろっかな。今日は疲れちゃったし)
などと考えてるいる時、前方から見知った2人が話しながら歩いている。どうやら2人は私に気づいたようで、こちらに話しかけてきた。
海「よ! 懍。何してんだ、こんなところで」
「志波副隊長! と、都さん。こんにちは。特に何かしてるわけではないですよ。さっきまで十番隊隊舎にお邪魔してました」
十三番隊の志波海燕副隊長と、奥さんの志波都第三席。護廷隊士の中でも、夫婦円満で仲睦まじい様子と、周りから羨ましがられている。
都「懍さん。お目覚めになられたのですね。隊長も海燕も私も、皆心配していたんですよ?」
「いやあ、すみません。無事、完治致しました」
海「にしても、十番隊隊舎に何をしに行ったんだ? お前、十番隊のヤツらと仲良かったっけ?」
「なんで行ったんでしょうね。私もよく分かってないです。まあ、私を初めて知る方たちもいらっしゃるでしょうし、ご挨拶にでもと…いった感じでしょうか」
海「相変わらず生真面目だなお前は」
「お2人は、デートか何かですか?」
都「で、デートって…そんな…」
海「まあ、そんなところだ。最近、時間が取れなかったからな。ちょっとでも一緒にいたいからよ」
都「か、海燕…」
「かー、甘ぇ甘ぇ。砂糖みたいだ。どうやら私はおじゃま虫みたいですね」
都「そ、そんなことないですよ! …どうですか、懍さんも私たちと一緒に歩きませんか?」
「じゃあお言葉に甘えて…と言いたいんですけど、今日はいろいろ疲れちゃって…。またいつか誘ってください」
海「まあ無理に誘う必要もないしな。ちゃんと身体休めとけよ。またうちの隊長みたいに臥すのはやめてくれ」
「分かってますよ。では、失礼します」
という会話を交わし、志波夫妻と別れた。あの2人の近くには、どこか安心するような優しい雰囲気がある。うん、いい夫婦だ。密かに2人に憧れる隊士がいることは知っているが、納得だ。私もいつか、あんな生活を送りたいな…無理だと思うけど。