第6章 伍ノ刻~友の結び~
よく分からねぇ女だ。勝手に隊舎に来るわ、仕事をやるわ、挙句にお茶を入れてくれた。松本とは大違いだ。仕事の内容も正確で早い。それに…。
(…綺麗な女だ)
たとえこの部屋が真黒に閉ざされても、コイツの髪は美しく輝くんだろう。雷にも似た、煌々とする金髪に目を奪われる。それに、油断してしまえば、炎のように赤く煌めく瞳に吸い込まれてしまいそうだ。ここ数日で、コイツの噂を聞くことが多かったが、それにも納得だ。自然と、視線が定まってしまう。少し着崩した死覇装は、コイツの魅力をさらに際立たせている。俺はコイツのことについて詳しくは知らねぇが、さっきまでの飄々としてた姿と、今仕事に打ち込んでる姿とでは、だいぶ印象が違う。
「…何か?」
日「い、いや…なんでもねぇ」
無意識の内にコイツを見ていた。不思議な女だ。何故だか自然と視線が吸い寄せられる。その美貌か、その色香のせいなのか。松本も相当だが、アイツとは違った"何か”を感じる。何かは分からないが、それがコイツの発する"魅力"なんだろう。
「…よし、こっちの書類も終わりましたよ。ここに置いておきますね」
日「ああ、助かった。礼を言う」
「いいえ、礼を言われるほどのことじゃないですよ」
日「俺が何か出来ることはないか。借りを返したいんだが」
「これくらいで、貸したつもりはありませんよ。言ったじゃないですか、礼を言われるほどのことじゃないって」
日「そうか…」
「じゃあ、これ以上長居すると悪いですし、ここらへんでおいとまさせていただきますね」
日「すまねぇ。助かった」
執務室から出ていく。スラッとした体系が、また目を奪う。俺よりも高い身長…。どこか余裕そうでミステリアスな女。実力は未知数だが、京楽からは、隊長格並かそれ以上の強さだと言われたことがある。余計に惹かれるじゃねぇか…。
普段ならば、この作業の倍は終わる筈だが、アイツがいたからだろうか、殆ど仕事に意識がいかなかった。神崎懍か。いい意味で、目が離せない存在かもしれねぇな。
窓の外を見れば夕方だった。その空は、アイツの髪の色とも瞳の色ともとれる、魅力的な色だった。