第6章 伍ノ刻~友の結び~
「あーあ。こんな強くなるなんて予想外だったなぁ」
白雷を放った跡地は、地面は抉れて木々が倒れ、炎が燃え広がっていた。取り敢えず、山火事にならないように鎮火しておこう。
「四ノ陣“五月雨”」
雨を降らせて…後は。
(そこで伸びてる副隊長をどうにかしないとね)
命に関わる程の重症ではないし、ある程度なら治療出来る。火傷跡が残らないように、迅速に丁寧に治療していく。
日々の鍛練の成果か、男らしい筋肉質な身体をしている。麒麟寺ももう少し筋肉を付ければきっと男らしくなるのに…。いや、あの前髪が全てを駄目にしている。散髪しろよ…。などと非常に生産性のないことを考えてながら治療は完了した。
(あとは…この人が目醒めるのを待つだけかな…)
檜「ん…」
「あ、目ぇ醒ましました?」
檜「ああ…。強いな、お前」
「そうでしょうか?」
俺はこいつに負けた。五席に負けるなんて、みっともないが…。
(というか、何で俺はこいつに膝枕されてるんだ…?)
神崎懍は木に寄っ掛かりながら、先程まで戦い合っていた所を眺めている。
(…綺麗だ)
小雨が降りしきり、少し濡れた金髪が色白い肌にくっついている。草花の匂いとは違う、女性特有の甘い匂い。雨の中でもはっきりと香りを感じとることが出来るのは、男の性なのか。頭には柔らかい太ももの感触が包み込んでいた。戦ったからか、俺を治療してくれたからか死覇装が乱れていた。胸の谷間が雨に濡れて光っている。
「? どうかしました?」
檜「い、いや…別に」
何を邪なことを考えているんだ俺は。しっかりしろ!
「動けますか?」
膝枕から解放されるのは名残惜しいが、そろそろ抜けないと色々な思いが爆発してしまいそうだ。俺は上半身を上げようとした。
檜「…いッ!」
「…まだ無理そうですね。大丈夫ですよ、もう少し休んでいただいて」
そう言って、また俺の頭を膝に乗せた。温かい笑顔だった。
檜「…悪い」
強く美しく、そして優しい。ふわふわとした可愛らしい声に、妙に…エロい。それは雨のせいかもしれないが。
どうやら、十一番隊の隊士から求婚されていたところを目撃した、という情報が流布している。求婚したくなる気持ちは分からんでもない。