第6章 伍ノ刻~友の結び~
先に動いたのは向こうだった。
檜「ふんッ!」
挨拶代わりか、一気に距離を縮め斬魄刀を降り降ろしてきた。
「……」
難なく防ぐ。やはり副隊長の実力は凄い。並みの隊士とは違う。刀が重たい。私は右へ受け流し、距離をとった。
檜「どうした。反撃してこないのか」
先程とは違う鋭い眼光が刺さる。まるで、狩られる獲物の気分だ。妙に心臓の鼓動が速くなった。
檜「こないのなら、こっちから行くぜ」
(…来る)
今度は空に逃げた。取り敢えず様子を見て、カウンターを狙おう。そう考えていた。
檜「逃がさないぜ。縛道の六十二“百歩欄干”」
(六十番台…)
副隊長といえども、軽く鬼道は使えるのか。斬術だけじゃないみたいだ。百歩欄干は捕縛対象者を傷つけることなく捕らえる。もしかしたら彼の優しさなのかもしれない。
百歩欄干から逃げようとするも、捕らえられてしまった。
檜「本当に鈍ってるんじゃないか?」
「…そんなことないですよ」
檜「悪いが、手加減はしないって言っちまったからな」
じりじりと詰め寄って来て、私の喉元に鋒を当てる。
檜「もう降参でいいよな」
「…破道の一“衝”」
檜「ぐわッ!」
鬼道で彼の身体を弾き飛ばし、拘束から抜け出した。特に危機を感じることはなかったが、大体の副隊長クラスの実力を知れた。自慢じゃないが、私から見ればまだ子供のような力だけど…。
檜「…零番台でこの威力…。どうやら実力は本当みたいだな」
「ありがとうございます」
檜「だが、俺はまだ無傷だ。…斬魄刀の解放はしないのか?」
「特に解放する理由もないので」
檜「俺を負かせる気はあるのか?」
いよいよ私の態度に苛立ちが募りはじめてきた頃だろう。…少し挑発してみようかな。
「そっちこそ解放したらどうですか? 私に傷の一つくらいは作れるかもしれませんよ?」
檜「……」
まあ解放はしてくれないだろう。目的は、一太刀目の時と同じ速度で向かって来てほしいだけだ。
檜「…むんッ!」
(かかった)
避けられない速度でこちらに向かって来た。これが想定していたカウンター攻撃だった。
「破道の四“白雷”」
地響きと爆音が辺りを包んだ。