第5章 肆ノ刻~一時の平和~
そのままルキアちゃんと仲良くなり、友達という関係になった。どうやら、彼女にとっては初めての同性の友達だったようだ。私が友達で後悔しないだろうか…。何故か私は卑屈になってしまったが、一件落着だろう。元々の依頼は達成した。あとは十三番隊で何とかしてくれるだろう。
その後も尸魂界に残って色々楽しんでいた。昼寝をしたりじい様の茶会に参加したり…などなど楽しいことがいっぱいあった。
この間も私は百年前の“あの事件”を追い続けた。しかし探しても探しても、資料らしきものを見つけることはついになかった。しかし諦める訳にはいかない。
私は図書館を再び訪れて、再度資料の場所を確認していた。一冊一冊を手に取って、一頁ずつ丁寧に調べていく。パズルのピースを拾い集めるように、様々な文献を色々な角度で読んでみたが、一向に分からない。私が悩み唸っている時、背後にいた一人の存在に気付いていなかった。
市「何してるん?」
胡散臭い、不気味な三番隊の隊長を務めている“市丸ギン”に遭遇した。一言で例えるなら蛇。一度絞められればもう離れることがない。つまり、永遠に監視されているイメージだ。
「い、市丸…隊長」
自然と顔が引き吊って、睨んでしまう。私自身苦手な死神だ。若い頃天才だか何だか囃されていたかどうかなど知らないが、嫌いなものは嫌いだ。
市「僕、そんなに嫌われてるんかなぁ?」
「…失礼しました。自然と顔に出てしまいました」
嫌味を投げるも、彼の表情は曇りもしない。ただ妙な笑顔をしているだけだ。
市「キミ…最近ここに入り浸ってるけど、どうしたん?」
「いえ、尸魂界の歴史のお勉強ですよ」
市「僕よりも長く生きてるんに、わざわざお勉強とか偉いなぁ」
確かに私は京楽隊長らと同じ世代。そこらへんの死神からすればババアみたいな年齢だ。
しかし市丸隊長が護廷十三隊の副官以上の席官に昇格した時、私は眠っていた筈だ。一言も喋ったこともない市丸隊長は、私のことを知らない筈なのに…。
形容し難い空気感がこの図書館を包んだ。上手いこと市丸隊長を回避して抜け出した。願わくば今度市丸隊長と会う時は他の人がいる時がいい。などと色々なことを考えていた。