第5章 肆ノ刻~一時の平和~
海「お前、朽木ルキアって知ってるか?」
「ルキアって…朽木白哉さんの義妹っていう、あの?」
海「おう、そうだ」
六番隊隊舎で白哉さんが言っていたことを思い出した。大体四十年ほど前に義妹を迎えたという話を。
「知ってるって…どういう?」
浮「…少し他の隊士が、避けているようでな…」
海「俺は積極的に話しかけているんだが…」
尸魂界での有数の貴族である朽木家だからこそ、遠慮してしまうのはちょっと分かる気がする。貴族も大変だな…。周りに気を使いながらも、愛想を振り撒く必要があるなんて。
海「そこでだな…懍」
「大体分かりますけど、何ですか?」
海「お前、朽木と会ってくれ」
話の流れから予想はついた。要は同性の死神同士仲良くしてほしいということだろう。貴族という部分が枷になってるなら、本人も複雑な気持ちなんじゃないかな。
「構いませんけど…」
浮「助かるよ。キミなら引き受けてくれると思っていた!」
海「そのまま仲良くしてくれると、朽木も護廷十三隊が心地良いものに感じられるだろう。一方的に頼んじまって悪いな」
「いえ、別に」
十三番隊は出身など分け隔てなく仲が良い。その隊に軋轢が入ってしまうのは、第三者としても嬉しいことじゃない。私が、できてしまった少しの溝を埋められるなら感激だ。どんな人かは分からないが、十三番隊の隊士だ。しかも白哉さんの義妹なら悪い死神ではないはず。
私は少しの不安とちょっとの期待を抱きながら“朽木ルキア”に会うことになった。
「どーも」
ル「ど、どうも」
距離感が掴めないまま会話が始まった。お見合いみたい。どれだけ相手がお偉い貴族だろうが、正直作法やら礼儀やらどうでもよかった。構えながら相手と会話する方がかえって失礼だろう。しかもこの子は特別扱いみたいな触れ方が苦手だと、志波副隊長から聞いている。ならば、自然と対応するのが最適解…な筈だ。
ル「海燕殿から伺っていた通り、美しくて優しい方ですね」
「そんな紹介されてたんだ」
浮竹隊長や志波副隊長から頼まれるくらいなんだ、どれくらいの堅物かと思ったけど実際喋ってみると普通の女の子って感じ。近より難いのが不思議な雰囲気だった。