第2章 壱ノ刻~昇進~
「えぇ!?…私が零番隊に!?」
驚きに溢れた声が一番隊の隊舍に響く。
一番隊の隊舍には私ともう一人。
山「…そうじゃ」
護廷十三隊総隊長“山本元柳斎重國”が鎮座していた。
「でも、私は八番隊の五席。隊長格でもないのに…。それに、霊王殿に認めていただいた訳では…」
山「儂がお主を推薦した」
「いやいや…推薦どうこうの御話では…」
山「霊王の許可もいただいている。であれば断る訳にはいくまい?」
突然の呼び出しに面喰らって、面倒でも仕方なくここに出向いてみたら、私が零番隊だなにやらと、話の筋が見えずただ驚いていた。
山「お主の斬拳走鬼や霊力は群を抜いている。もはや、護廷に止めておくのも勿体無いと判断したまで」
「私の自由は?…拒否権というものは無いのですか?」
山「案ずるな。ここと同じで住みやすい所だと聞いている。されど、お主の意見を尊重したいのも事実。少し考えておくように」
「…霊王殿を守るのが零番隊の任務だっけ?」
山「そうじゃ」
「んー…つまんなそう」
山「戦がなければ瀞霊廷も静かである。…お主がそう申すと思い、儂は『霊王宮と瀞霊廷の行き来が自由であること』を、お主を零番隊の隊士とする条件とした」
「『儂は』…? …その言い方…霊王殿が私を求めているみたい」
山「霊王は戦闘に特化した死神を求めている。だからお主を推薦した」
「戦闘に特化…剣八さんにでも任せればいいんじゃ…」
山「あやつは斬術のみであろう。総合的に見ても、お主が適性と思ったのじゃ。それにお主、人の上に立つ柄ではないだろう。零番隊は隊士全員が隊長じゃ。…少しは行く気になってくれたかの」
「…どうせ、断っても何度も言ってくるんでしょ?…面倒だけどなってあげる。ちゃんと条件付きでね」
山「感謝するぞ懍。ところで、今日は茶会を開催する日なのじゃが、来るかの?」
「…お菓子くれるなら」
突然決まった零番隊への移動に驚いたけど、瀞霊廷にもお邪魔できるなら特に断る理由もなかった。
隊長副隊長含め、友達が沢山いる。友達とお話ができなくなるのは寂しい。
じい様が三日の休暇を与えてくれた。その間に、各隊員との別れを済ませておくようにって。
別に今生の別れでもないから休暇なんて無くてもいいんだけど、じい様の配慮なのかもしれない。ならばそれに甘えよう。
