第5章 肆ノ刻~一時の平和~
「うぅ…呑み過ぎた」
あの後、私の自己紹介があった。何の病気だったのか聞かれたが、隊長が上手く誤魔化してくれた。
どうやら今の隊長副隊長には、八番隊第五席は病気で寝たきりだった、という情報しか与えられていないらしい。つまり私を零番隊だと知っている死神は、限られているということになる。かえってそっちの方が動きやすいから良いんだけどね。
一番隊総隊長“山本元柳斎重國”。一番隊副隊長“雀部長次郎”。二番隊隊長“砕蜂”。四番隊隊長“卯ノ花烈”。八番隊隊長“京楽春水”。十三番隊長“浮竹十四郎”。十三番隊副隊長“志波海燕”。
この七人しか、私が零番隊ということを知らないようだ。
少し頭が痛いまま向かった先は図書館。ここにはさまざまな資料が置いてある。久しぶりに使うからか、百年前と本棚などの配置が変わったせいか、全く資料の列が分からなかった。
(仕方ない…。誰かに聞いた方が早い)
周りを見渡すと、机の上で一冊の本を広げながらその本について語り合っている二人の女性死神がいた。水を指すようで申し訳ないけど、二人に尋ねることにした。
「あの…すみません」
雛「はい?」
「えっと…瀞霊廷の、ここ数十年の資料を読みたいんですけど、資料の列が分からなくて…」
雛「分かりました。案内しますね」
ニコッと笑う少女の後について行こうとした時、もう一人の女性死神に声をかけられた。その姿と声はどこかで聞いたことのあるような、懐かしい声だった。
伊「…神崎さん?」
「キミは…伊勢七緒ちゃん!?」
伊「はい!お久しぶりです!」
予想もしていなかった再会に驚きながらも、口を開けた。
「…美人になったねえ」
伊「な、何を突然。京楽隊長のようなことを…」
もじもじと照れながらも笑いかけてくれた。
雛「あの…お知り合いなんですか?」
先程の女性が話し掛けてきた。七緒ちゃんは私にその女性を紹介してくれた。
伊「神崎さん、こちら五番隊副隊長の“雛森桃”さん。雛森さん、こちらは八番隊第五席の“神崎懍”さんです」
雛「ああ、病気はもう治ったんですね!良かった…。どうも、雛森桃です。よろしくお願いします」