第4章 参ノ刻~歯車は廻る~
『ちょっとは手加減してよ…。いてて…』
お馴染み麒麟殿。血の池地獄に私たちは浸かっています。
「斬魄刀も浸かれるんだね」
麒「当たりめェだろ。斬魄刀と使用者は一蓮托生。傷を癒すのも使用者の霊力によって回復するんだからなァ」
修「そちは懍の方に目を向けるな。向いたら殺すぞ」
麒「何でて前ェはそこまでコイツに執着してんだよ!」
修「騒ぐな。一物を削ぐぞ」
「やめて下さいよ。物騒だなあ」
『よくまあ懍も淡々としてるね』
霊圧が垂れ流しになっていたのは、私の中の虚の霊圧を抑えていなかったから…らしい。実際、虚の力を手に入れた時、霊圧の抑制方法が解明して現在は完璧に抑えてられている。
首に掛かっているネックレス型霊圧抑制装置を見る。喜助くん…現世で何をやっているのだろう。夜一さんも一緒かな…。あの二人のことだ。死んではいないだろう。ちゃんと矢胴丸副隊長たちの虚化は解除されたのだろうか。
『でも、これでまた瀞霊廷に降りれるね。やったじゃん!』
修「懍が目を醒ましたことを、隊長らに直接会って伝えた方が良いじゃろう」
「ええ。でも、まだ戦いの勘は取り戻せていません。ちゃんと元の戦闘力に戻るまで、瀞霊廷に降りることはしません」
修「…そうか。では、改めてそちが目醒めたことをあやつらに伝えておこう。少しのあいだこちらで生活することも一緒にな」
「ありがとうございます」
目を醒ましたからといって、おいそれと瀞霊廷に戻れない。もしかしたら、あの事件の首謀者が潜伏しているかもしれない。であれば、またやられる訳にはいかない。更に強くなって、今度こそ倒す。倒れる訳にはいかない。
「また明日お願い、雷切」
『…珍しいね。いいよ、私も懍と遊べて楽しいし!』
「ありがとう、雷切」
後ろで修多羅さんが『かわいらしい二人の強い絆…。美しいぞ!』と、訳分からないことを言っている。麒麟寺よりも修多羅さんの方が危なくないか?…段々エスカレートしてきた修多羅さんを尻目に、白骨地獄へ向かいながらあの日について考え始めた。
(…あの事件の首謀者は、何を企んでいたんだろう…)
いくら考えても、答えにはたどり着かない。目の前にある鍛練を行った先に、もしかしたらヒントがあるのかもしれない。