第4章 参ノ刻~歯車は廻る~
『忘れたの!?電子は私の力そのもの。白雷なんて、私には効かないよ!』
雷切が刀を強く握る。
『一ノ陣“神解け”』
私の頭上から雷が降りしきる。瞬歩で避けるので精一杯だった私に、直接斬撃を喰らわしてきた。
その力に耐えられず、私の身体にまた一つ刀傷がついた。
「はぁ…はぁ…」
『手堪えないなあ。もう少し真面目にやってよ』
「大真面目だよ。本当にもう少しだから…」
『だからもう少しって何なの?』
今度は私が刀を強く握る。
「二ノ陣“神風”」
霊圧の風を作り、竜巻を起こした。霊力が高ければ高いほど強くなる技。今の私なら彼女の動きを止める程度には、ちょうどいいだろう。
(…この霊力…。“この霊力”を上手く使えれば…)
私は“あの時”をイメージして、顔に手をかけた。
神風が吹きとばされた。中から雷切が顔を出した。
『こんな技…なんの為に』
「時間稼ぎだよ…。でも大丈夫、もう完成しそうだから」
顔にかけた手を、一気に顎下まで落とした。
目の前の視界が悪くなった。
ドッと霊圧が重くなった。死神の…懍の霊圧だけじゃない。懍の霊圧に加えてこれは…“虚”の霊圧…?
どうやら私の考えは的中したようだった。
『何…?…その仮面』
懍の顔は、虚の仮面と思わしきもので包まれていた。深い…。深海のようなその霊圧に少し恐怖を感じた。
『…懍……?』
もしかしたら、また虚化が再発したのかもしれない。今度は虚になってしまうかもしれない。
言い知れぬ恐怖に泣きそうになった。しかし、その仮面の中から優しい声が聞こえてきた。
「大丈夫だよ、雷切」
聞き慣れたその声に安堵した。冷静になった所で、私は懍に質問した。
予想はできた。彼女が何を言うのか。だから私は端的に答えた。
「“虚”を自分の力にしたの」
彼女は目を丸くした。それはそうだろう。直ぐに自分の力に出来るほど、簡単に出来るものではないだろう。しかし、この身体に巡る霊力は明らかに虚のものだった。
「ごめん、雷切…上手く避けてね」
『え…?』
左手を前に出し、雷切に指を差した。指先に虚の霊力だけを集中させ、それを放出させた。
『まさか…!?』
それは紛れもない虚閃だった。