第4章 参ノ刻~歯車は廻る~
あの日から九十一年後…。
修「…拭き終わったぞ」
「ありがとうございます。修多羅さん」
数日前に私は目を醒ましたらしい。
雷切は二枚屋さんが管理してくれていたようで、錆びることなく私の手元に戻ってきた。眠っている最中に修多羅さんは汗を拭いてくれたらしく『そちの身体は美しかったぞ』と、息を荒げながら伝えてくれた。別にその情報は欲しくなかった。
私は修多羅さんにお礼を言い、死覇装を着直そうとした。その時、一人の零番隊隊長が部屋に入ってきた。
麒「うーす、懍。調子はどう…っ!?」
死覇装を着直そうとしていた私はベッドの上で半身を起こしていた。下半身は毛布に包まれていたが、上半身は裸だった。
麒麟寺の視線は明らかに私の胸に向いていた。
「…麒麟寺…?」
麒「いや…その……。不可抗力だ…その…。すまねェ!」
麒麟寺はドタドタと走り去ってしまった。
修「安心せい、懍。あやつの穢らわしい眼球を抉り取ってやる。もう二度と懍のことを見れないようにの」
「怖っ!? 何その発想。もはや狂気ですよ!? …別にいいですよ。そこまで気にしてません。というか、麒麟殿にいる時は基本的に裸ですし」
修「チッ…。いつもあやつだけ懍の裸を見よって。妾も見たいというのに」
「その発言、ちょっと恐いんですけど」
修「妾が毎日そちの死覇装を仕立ててやる。どうじゃ?」
「何が『どうじゃ?』なのかさっぱり見当もつきません」
猿柿ひよ里をはじめ、四楓院夜一、浦原喜助、九番隊、始末特務部隊の面々は隊長資格を剥奪された。
(…矢胴丸副隊長…)
勿論それは私の上官にも言えること。虚化は解除できたのだろうか…。きっと喜助くんなら何とかしてくれるとは思うけど…。
修「懍が眠っているあいだに、護廷十三隊は相当変貌している。変わっていないのは、一番隊と四番隊隊長、八番隊隊長、十三番隊隊長くらいじゃ」
「そうですか。あの頃とはすっかり変わってしまいましたね」
修「そちが眠っていたことは、山本重國に伝えておる。懍も変わらず八番隊第五席のままじゃ」
「嬉しいような…嬉しくないような…」
風邪を引いてしまわない内に、私は死覇装を着直した。