第4章 参ノ刻~歯車は廻る~
修「…どうじゃ?」
麒「これで大丈夫だ。虚化は治るだろうぜ」
曳「そうかい。良かった…」
二「いつ目を醒ますんDa?」
麒「コイツの虚化の解除には、馬鹿デカイ…そして馬鹿多い霊力を使っちまった。数十年は目醒めることはないだろう」
兵「…そうか」
霊王宮では神崎懍の、死神の虚化を解除する治療が行われていた。どうやら虚化は霊力が高い死神ほど進行が速く、虚化の解除に時間がかかるようだ。仮に治せたとしても、目を醒ますのは元の霊力と相応の霊力を取り戻す時間を要する為、数年は目醒めることがないだろう。
曳「瀞霊廷では何が起こっていたんだい?」
修「分からぬ。霊子ではなく魂魄が消失するなど、聞いたことがない」
二「聞いたことがなくても、チャン懍の姿を見れば分かるSa」
兵「“虚化”…。懍に害を及ぼさなければいいが」
麒「まあ大丈夫だろう。コイツに目醒めたいと思う気持ちがあれば、いつかは目醒めるさ。俺たちが何をしたところで、今のコイツには届かない。黙ってコイツの無事を祈ることしかできねェ」
虚の仮面は無くなったが、霊力がフラついてまともに息をすることすら困難な状態になっていた。
虚化のせいか、はたまた霊力が少なくなっているせいか、身体中に汗が流れていた。真夜中に輝く綺麗な金髪と、汗で濡れた白い肌が月明かりに照らされ、妙に艶かしい。死覇装の襟もはだけて、膨よかな胸部の二つに目を奪われた。美しい胸に意馬心猿の妄念を抱いてしまう。裾も捲り上がり、細く健康的な足もまた、武神と呼ばれる彼女が一人のかわいらしい少女であったことを思い出させてくれた。
幸いにも、生命維持はできそうだった。あと今のコイツに足りないものは“時間”。元通りの霊力を取り戻す時間だけだ。
麒「コイツを寝かせるには俺の離宮が一番だろう」
修「懍に何かするつもりか?…懍を汚すようなことをすれば、そちの一物を切り落とすぞ…」
麒「する訳ねェだろ!単純に治癒専門の俺が見ておいた方が良いと思っただけだっつの!」
二「チャン懍の斬魄刀はチャンボクが預かろう。丁重に保管しておくYo」
こうして一夜にして隊長格が倒される事件は、一旦幕を閉じた。