第4章 参ノ刻~歯車は廻る~
「…ごめんね。矢胴丸副隊長は今夜いなくてね」
伊「どうしてですか?」
「大事な仕事でね。大丈夫だよ、明け方には戻ってくると思うよ。きっとね」
伊「そうですか…。ありがとうございました」
「いいえ、こちらこそ」
七緒ちゃんを見送ろうとした時、地獄蝶が飛んできた。
(━━っ!)
伊「どうかしましたか?」
「ううん。私もこれから行くところがあってね。一人で帰れるかな?」
伊「はい、大丈夫です。ありがとうございました!」
私は斬魄刀を持った。霊王宮から瀞霊廷に来る時には必ず隊長羽織を置いてこなければいけない、というルールがある。理由は、一般隊士に私が零番隊だと悟らせないようにする為らしい。
私は八番隊の五席として隊首室を出ようとした。その時…。
伊「あの…お気をつけて」
七緒ちゃんが微笑して見送ってくれた。
地獄蝶の内容はこうだった。現地に向かった始末特務部隊の隊員の霊圧反応が徐々に弱ってきている。零番隊隊長及び八番隊第五席は至急現地に急行するように、という内容だった。
霊圧反応消失ではなく、霊圧反応が弱ってきていることがせめてもの救いだった。もしかしたら最悪な事態にはならないかもしれない。根拠のない希望を胸に現地に向かった。
眼前に広がっていたのは、現実とは思いたくない光景だった。始末特務部隊が地に伏せ、虚の仮面のようなものが顔に掛かっていた。
(これは…“虚化”!?)
死神の虚化…。それに気を取られていた私は、背後に迫っていた存在に気付かなかった。
私の胸に、鋭い痛みが刺さった。気付いた時には後の祭り。斬魄刀で私の身体を貫かれていた。私は斬魄刀の持ち主が誰なのか、この事件の首謀者は誰なのかが分からないまま、私自身にも虚化が始まった。
藍「思わぬ収穫だな」
隊長格八人だけではなく、零番隊も手にかけることが出来たとは。ありがとう、あなた方はいい材料だった。
浦(今なら…)
ボクは藍染副隊長の背後をとり、斬魄刀を振った。しかし、彼の反応が早く副官章を落とすことしか出来なかった。
藍「…ほう。これはまた、面白いお客様だ。何の御用ですか?浦原隊長、握菱大鬼道長」
ボクは虚化した九人に視線を落とした。きっと平子隊長たちは藍染副隊長がこの事件の首謀者だったと解ったはず。ただ…。