第4章 参ノ刻~歯車は廻る~
京「懍ちゃんは死なないでよ」
「懍ちゃん“は”って何ですか。“は”って…。他の隊長たちが死ぬみたいな言い方はやめて下さい」
京「ごめんよ。だけどどうにもきな臭くってね。この事件、誰かが裏で動いてるような…そんな気がしてね」
「隊長もそう思いますか?」
京「うーん…。考え過ぎかもしれないけどね」
隊舍に着いて隊首室で待機していた。正直、早く現地に行って何が起きているのか確認したかった。こうしている内に、何か仕組まれている…。そんな感じがした。
京「ちょっと外行ってくるね」
「何処へ行くんですか?」
京「ただの散歩さ」
女性ものの羽織を隊長羽織の上から重ねながら、隊長室から出ていった。きっと考えがあってのことだろう。意味もなくふらふらとほっつき歩くような人じゃない、ウチの隊長は。
(…副隊長、大丈夫かな)
私はただ此処で待機することしかできないことに苛立ちを覚え始めていた。
京「ふ~んふふ~ん♪っとォ…。おっ、見廻りご苦労さん」
「きょ…京楽隊長っ!?どうされたのですか!?このような時間に…」
京「いやあ、ちょっと寝付きが悪くてねえ」
ボクは見廻りの隊士に会釈しながら“彼”を見た。
京「…考え過ぎだったかな」
「はっ!?」
京「いや、藍染副隊長も寝付けないみたいだねえ」
見廻りの隊士にほどほどにして休むように忠告して、隊舍に帰ろうとした。ふと見上げると、艶かしく輝く月が瀞霊廷を見下ろしているのが見えた。
京(変な月だなあ…)
いよいよ手持ちぶさたでじっとできなくなってきた。
(…いっそのこと、もう現地に向かおうかな)
そう思い始めていた時、隊首室に一人の隊士が入ってきた。見た目は子供そのもの。眼鏡を掛け、大きい本を抱えた少女が立っていた。
「キミは…伊勢七緒ちゃん?」
伊「は、はい!覚えて頂いて光栄です!」
「こんな夜遅くにどうしたの?」
伊「あの…矢胴丸副隊長と読書をしたいと思いまして…。でも、副長室にもいらっしゃらなかったので、もしかしたら隊首室にいるかもしれないと…」
(そういえば今日、一日だったっけ)
伊「神崎五席は矢胴丸副隊長がどこにいらっしゃるかご存知ですか?」