第3章 弐ノ刻~牧歌的日々~
兵「あの時は油断しておった。若い小娘に負ける筈はないと」
「零番隊たるもの、油断してはいけないと、最初に仰ってたような気がするんですけど」
麒麟殿の血の池地獄に浸かりながら、入隊試験の時を思い馳せていた。いろいろ失礼なことを言ってしまったような…。
ポチャっと血の池地獄に足が浸かるのが見えた。修多羅さんが入って来た。
兵「おお。おんしも来たか」
修「懍が裸だと聞いてな。邪魔するぞ」
「どこから流出したんですか、その情報」
会話には交ざってないが、ここ麒麟殿の長である麒麟寺天示郎と曳舟桐生さん、そして二枚屋王悦さんも白骨地獄に入浴している。
修「みな、そちを大切に思うておる。妾達の娘のようにの」
「あ、ありがとうございます」
兵「して、おんしの斬魄刀の能力はソレだけなのか?」
「いいえ。…いいえと言いますか、兵主部さんを倒した時のアレは、始解すらしていません」
修「しかし、解号を唱えておった筈じゃが…」
「あれは、本来の解号ではありません」
我に伏せ《雷切》
本来の解号とは異なる、私独自に編み出した始解の解号。私も雷切も気分屋だからこそ、解号も適当で良いのだ。…いや、何故解号を変えても雷切が出てくるのか理屈は分からないが…。
兵「話を戻すが、おんしの始解の能力は一体何なのだ?」
「あの時私が言った“電子”を力にする能力は、雷切が最初から持っている力です。有難いことに彼女のその能力の恩恵を受けて、私も雷系統の鬼道の威力は数十倍も跳ね上がります。零番台の白雷でさえも、八十、九十番台の威力になります」
修「恐ろしいのう」
「始解の能力は、純粋な身体強化です」
兵「ほう。それで?」
「それだけです。ただ、雷切の形が刀ではなく、青い雷を帯びた太刀に変わるだけです」
兵「ふうむ。言い方は悪いが、地味じゃな」
「そうですね。でも、扱い易いですよ」
修「気になっておったんじゃが、そちの斬魄刀は勝手に具象化するのか?」
「ええ。勝手にしますよ。私の意志とは関係なく」
兵「わしを斬ったのはその雷切だったのか?」
「正確に言えば違いますけど、まあ大体そうですね」
修「我に伏せ…。実に武神らしい解号じゃな…」
兵「味方ながら恐ろしい奴じゃな、おんしは」