第2章 壱ノ刻~昇進~
十二番隊隊舍隊首室
喜「へぇ、零番隊に。いやー、恐れいるッス」
かつての戦友、浦原喜助の元に来ていた。
十二番隊隊長及び初代技術開発局局長。
長い肩書きを背負ってるなぁ喜助くん。相変わらず読めない男だよ。というか隊首室をこんなに改造して、副隊長は怒らないのかな?
喜「それで、懍サン。わざわざそんなことを言いにここまで来た訳ではないでしょう?」
「えぇ。実はまた最近、霊力を抑えるのが辛くなってきてね。技術開発局に『霊力抑制装置』みたいなものを造っていただけるとありがたいんだけど…ダメ?」
喜「いえいえ。他でもない懍サンの頼みだ。断る理由なんてないッスよ」
「ありがとう喜助くん」
喜「しかし、霊力を抑えてソレとは…。やはりアナタは、他のどの死神よりも強い。敵じゃなくて助かります」
「私も、喜助くんの多才な手段に驚かされるばかりだよ。敵じゃなくて助かるのはこっちの台詞」
喜「そうッスか?…じゃあどうです、懍サン。このまま二人で一緒に愛の逃避行なんてのは」
「夜一さんと一緒なら、走ってあげてもいいけど?」
喜「いやぁ。勘弁願いたいッスねぇ」
談笑は夕方まで続いた。実際楽しいし、彼には知識がある。その頭脳には一体どれだけのデータが組み込まれているのか。気になる…。
霊力抑制装置がものの数時間で完成したようなので、私は技術開発局の内部にお邪魔した。
さすが蛆虫の巣からスカウトされてきた局員達。外見から一癖二癖もある人達ばかりだった。とりわけ副局長の“涅マユリ”は今まで見てきた死神達の中でも異端児だった。…将来が恐ろしい。
喜「はい。これが『ネックレス型霊力抑制装置』ッス」
「…わざわざネックレスに仕立てる必要あった?」
喜「だって邪魔でしょう?…霊力を抑える為に片手に装置を持つなんて。なのでネックレス型にしておきました。これはアタシからの愛だと思って受け取ってください」
「途端に受け取りたくなくなったんだけど」
じい様からも、私は霊圧が強すぎて他の隊士を気絶させてしまうほどだと言っていた。私自身、よくよく分かってないが、私の霊圧で支障を与えてしまっているのであるなら、いっそのこと霊力を抑制する装置を造ってしまえばいいと思った。
しかし、数時間で造ってしまう技術開発局の面々には恐れ入る。