第2章 壱ノ刻~昇進~
『憂い?……そ、そうでしょそうでしょ。さすが私頼りになるぅ!』
「はいはい、頼りになりますよ」
さっきまで私に勝つことしか頭になかったのに、途端に思い出したのか自慢げに笑顔を見せてくれた。
“王属特務零番隊”
段々と、恐怖は無くなってきた。いや、寧ろ楽しみになってきた。つい数年前、十二番隊の隊長が零番隊に昇進した。その偉大な先輩と肩を並べるのも楽しそうだ。
『もう帰っちゃうの?』
「うん。まだ零番隊に行く前にやることが残ってるしね」
悲しそうな顔を浮かべる。直ぐに戦い戦いとか言わなければ、もっと可愛げのある子になっただろうに。
『そっか…。残念だけどお別れだね』
「うん。じゃあね」
私がこの世界から帰ろうとした時。
『懍…死なないでね…』
囁くような声で、寂しそうな顔で見送ってくれた。
目を醒ますと、そこは遊び場だった。岩に刺さる斬魄刀を抜き、鞘に納めた。
「死なないよ。だって、アナタが私を守ってくれるんでしょ?」
届いているのか分からないが、今私の言える最大限の言葉を彼女に送った。もし、彼女がここにいたら何て言うだろう。もしかしたら、抱きしめてくれるかな。はたまた、殴りかかって来るのかな…と、ニヤニヤ妄想に耽りながら、私は私の相棒…
“雷切《らいきり》”と共に更に強くなることを、胸に誓った。