第1章 初キス騒動
中庭に移動した琥一たち。
そう、三日三晩悶々としながら考えたのは、
琉夏以外の異性と初めてのキスを済ませると言う事だった。
それ以上の事も考えたが、望まれても居ないのに余りにも馬鹿な考えだとは思った。
琥一を選んだ理由と言えば、それ意外に頼める人が居なかったからだ。
柔道ひと筋な嵐には絶対に頼めない。
玉緒に関しては論外だし、女慣れをしているとは言えニーナや聖司になど頼めるはずも無い。
そうなってくると、身近に居て淡々と事を済ませてくれそうなのは琥一しか思い浮かばなかったのだ。
「おいおい…美奈子勘弁しろよ。
流石にそれは…」
しかし琥一も琉夏と恋人になった
美奈子からそんな申し出を受けるとは思わず、珍しく戸惑っているらしかった。
手のかかる弟がようやく手に入れた幸せを壊そうなど思わない。
だが、その反応も想定内だったエミン。
「…(´-д-)-3はぁ。お前…何考えてんだ?」
しかし、落ち着いた琥一の声音を聞き、エミンがグッと言葉に詰まる。
理由を言うべきか否か一瞬躊躇うものの、自分の我儘で琥一を巻き込もうとしている事を考えれば、伝えないと言う選択は些か理不尽なような気もした。
「…恥ずかしいんだけど…私…男性との経験が一度もないから…。だから、琉夏ちゃん…面倒だと言われてしまって…」
思い切ってそう言葉にすると、ツンと鼻の奥が痛くなる。
あの日の琉夏の溜息が脳裏を掠めた。
「…琉夏ちゃんに面倒だと思われる位なら…ちゃんと経験を積んでおこうと思って…」
いつか出来る大切な人の為に取っておいた「初めて」を、その大切な人に面倒だと言われ、
自分なりに考えた結果がこれだ。
思わず泣き出してしまいそうになるのをグッと堪えて琥一を見上げた。
「だから…コウちゃんにお願い出来ないかと思って…」
「美奈子…」
無表情のままの琥一が美奈子の肩にそっと手を掛けた。
大きな手に肩を包まれてビクッと身体を揺らす。
琉夏のそれとはまた違う無骨な手を感じて美奈子の緊張が一気に高まった。