第6章 嫉妬
琉夏の唇は美奈子の下唇を甘く噛んでは吸って『ちゅっチュクッッ』とリップ音の隙間で舌を絡め取り、熱く蕩ける程に濃厚な口づけに美奈子の身体に心地好い痺れが駆け抜ける。
唾液を零しそうになる位に琉夏の舌が歯列や口腔内を愛撫して繋がりを深く求められて……彼の唇の軌道は耳元へと移り出す。
「ぁ、琉夏くん…耳は…っ」
「どうも俺は美奈子の事となるといじめたくなる……だめだな、ヒーローでいたいと思うのに……」
「……ぁッ!」
「美奈子を今すぐ抱きたい」
「ん、…ぁ…琉夏くんっ」
美奈子の横顔に垂れる髪を唇で払い退け、現れた耳の曲線に琉夏がキスを落として舌先を這わせた。
そのぞわりとした感覚に美奈子の首筋や二の腕がふつふつと粟立つ、そうして彼の唇が肌を滑り下りて肩にまで伝った時。
―――ふわりと。
琉夏の鼻に掛かるのは美奈子の肩に残る、自分とは別の男の残り香。
「―――…」
「…っ、琉夏くん?」
そうして脳裏にプレイバックされるのは、自分の前で馴れ馴れしく愛しい恋人を抱き寄せながら、無礼な台詞を並べ連ねたあの男。
自分にも周囲にも、ましてや美奈子にも馴染みの無い煙草の匂い。
そこに混ざる男臭い残り香が彼女の肩と髪に纏わり付いていて―――…。
「琉夏くん、どうかした?」
「いや…」
普段は穏やかな琉夏が成り振り構わず怒りに任せる姿は怱々無い……が、その内心で感情の焔を揺らめかせる時は意外にも度々とあって。
その大半は美奈子が理由だ。
「今すぐ美奈子を腕に抱きたいと思ったけど、ベッドまで我慢するよ。よし、シャワー浴びてこよう?二人で…流石にお風呂場では何もしないから。ただ……」
「え?」
「ただ……今夜は俺も自制が利かない」
それは一人の男としての感情で、激しく火の粉を上げる静かな銀色の焔。
感情の起伏が穏やか故の反面、一度その琴線に触れてしまえば誰よりも激しく強い―――激情。
「ベッドでは、ずっと美奈子を求めてしまうけど……いいよね?」