第6章 嫉妬
「いえ、別にそういう訳じゃ……」
「そ?良かった~。皆口では男いないとかっつって実はいるんです~とか多いからさ。ま、男いたって別に構わねーんだけども……」
「あの…?」
明らかに通せん坊。
美奈子の行手を塞ぐようにして立つ男性は、飲み会が開始してからずっと隣に座り何かと馴れ馴れしく話し掛けてきていた男だ。
女性用と男性用とで分かれているお手洗い、別に順番を待つ必要も無いのだから必然的に彼がここで美奈子を待ち伏せていたのだというのは分かる。
怪訝な顔で様子を伺う美奈子に対し、男性はズイッとその間合いを詰めてきた。
「つーかさ、今から二人でこの後どっか行かない?」
「え?」
「あと一時間くらいパパッと盛り上がって飲んだ後さ、飲み会閉めた後に俺と遊び行こうよ、美奈子ちゃん」
「あの、私は……」
詰められた間合いは距離が一気に縮む、男性の顔が至近距離に来るような近さ。
最初から馴れ馴れしいとは思っていたが今は輪を掛けて態度を砕けられている、ましてや男性の手が肩に伸びてきて強引に美奈子の身体を引き寄せ、密着して寄り添ってきた。
「いーじゃん、決まり!だって美奈子ちゃん、最初っから俺狙いだったっしょ。気が合うね~、俺も美奈子ちゃん狙いだったし!」
「は…はい?」
「こんなの来るぐらいなら美奈子ちゃんも良さ気な野郎と良い思いしたかった~って口だろ?だから彼氏いたって何だってさ、ほら!一夜の息抜きくらいはさ!」
「……な!」
その一言には先輩達だけでなく、自分も含めてそういう目で見られていたという侮辱にカチンとくる。
ましてや彼氏がいるならいるでも構わずに一晩の行為相手を漁りに来たような、そんな女に思われた事にも美奈子がカッと反論をしに食い掛かった。
「あのですね!私は別にそんなつもりじゃ……!」
自分の肩に置かれた馴れ馴れしい不快な手、それを美奈子が払い退けようとした時、突然グイッと誰かに身体を引き寄せられた。