第6章 嫉妬
人の素朴な疑問は、
何気ない時に出てきてしまうもの。
「おい琥一、琉夏って怒ることあるか?……その、なんだ、いつもニコニコしてる奴だし、そんな面もあるのかなって素朴な疑問なんだが」
聖司が琥一に問う
「……さあな、あいつだって感情はある。」
「ああ、それもそうか……なんか、悪い。いつもニコニコしてる奴だし激昂する姿とか想像もつかない……」
琥一は弟である琉夏が一人の男に戻るとき、
普段からは想像し得ない激情を抱く相手を思い浮かべた。
「あいつも……人間だからな」
ふとやんちゃしていた頃を思い出す琥一。
あいつと再会するまでは、来るもの拒まず去るもの追わずで女性問題もあった。
高校入学前に彼女と再会した琉夏は、変わった。
『みんなの王子様』ではなく『桜井琉夏』として、琉夏が胸に嵐渦巻く激情を向ける相手は、恐らく彼女だけだろう―――……。
(……困ったな)
席を抜け出して息を吐いたお手洗い、洗面台に寄り掛かって美奈子がスマホを開いた。
画面下に表示されたのは予定時間も差し掛かるPM8:00。
(先輩の頼みで断れなかったから来ちゃったけど…まさか合コンだったなんてなぁ……琉夏くん怒るよね…)
スマホをカバンにしまうと洗面台に向き直り、鏡に映る自分の姿と相談し合うかのように『はぁ』と溜息。
(8時半には琉夏くんが迎えに来るのに…急いで抜け出さなくちゃ…)